知立市、刈谷市、安城市、豊田市、名古屋市のみなさんこんにちは。
愛知県知立市のなんよう動物病院の院長鈴木です。
今回は、犬の甲状腺機能低下症の症状と原因、当院での治療について説明をさせていただきます。
甲状腺は喉のあたりの気管の両側に位置し、主に全身の代謝を担ったホルモンを出しています。
脳の下垂体と呼ばれる部分から甲状腺に対して、甲状腺ホルモンの分泌を制御するための制御ホルモンが分泌されており、その指令に応じて血中へのホルモン放出量を調節しています。
甲状腺ホルモンの血中濃度が高くなりすぎる場合を甲状腺機能亢進症、ホルモンの血中濃度が低くなりすぎる場合を甲状腺機能低下症と言います。
今回のお話とは異なりますが、甲状腺機能亢進症は6歳齢以降のシニア期のねこちゃんに多く、わんちゃんでは稀な疾患となっています。
甲状腺ホルモン量が減少すると、以下のような症状が出てきます。
・皮膚の症状
左右対称性の脱毛
尻尾の脱毛(ラットテイル)
皮膚の色素変化(色素沈着)
フケの増加(角化異常)
再発性膿皮症
・耳の症状
再発性外耳炎
・一般状態の変化
運動量の減少
食欲の減退
体重の増加
・血液検査での変化
軽度の貧血
高脂血症
肝酵素値の増加
当院は皮膚科の専門診療を行っているため、赤字で示したような皮膚症状から甲状腺機能低下症が判明することが非常に多いです。
下の写真はラットテイルと呼ばれる尻尾の脱毛です。
ほとんどの場合、甲状腺組織の破壊が原因で起こります。
そのほかに脳の異常や甲状腺腫瘍などから起こることもあります。
ホルモン検査(血液検査)甲状腺ホルモンの数値を見ます。当院ではT4とTSHという2つの項目を測定することで診断精度を高めています。
また直接甲状腺にエコーを当てて、甲状腺の形やエコーでの見え方を評価する場合もあります。
甲状腺のホルモンが低下している為、ホルモン補充療法を行います。
当院ではレボチロキシンナトリウムというホルモン剤を1日1〜2回経口投与します。
治療を始めて1〜2ヶ月程でホルモン濃度や高脂血症は改善が見られます。皮膚や毛の状態に変化が見られるのは、投薬開始から3〜6ヶ月ほどかかることが多いです。
先程のわんちゃんの経口投与3ヶ月後の尻尾の比較写真です。毛が生えてきているのが分かりますね!
甲状腺機能低下症は完治できる病気ではない為、このお薬は生涯の投薬が必要となります。
甲状腺の疾患は他の内臓疾患や整形疾患に比べ、特徴的な臨床症状がある病気です。ご飯は一定なのに太ってきた、皮膚症状が長期間改善しないなど当てはまる症状があればいつでもご相談、ご来院ください。