犬の僧帽弁不全症の症状と原因、治療について|獣医師が解説

  • 2022年11月24日
  • 最終更新日 2023年5月12日
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知立市、刈谷市、安城市、豊田市、名古屋市のみなさんこんにちは。

愛知県知立市のなんよう動物病院の院長鈴木です。

今回は、犬の僧帽弁閉鎖不全症の症状と原因、当院での治療について説明をさせていただきます。

<僧帽弁閉鎖不全症の症状>

僧帽弁閉鎖不全症の症状には、以下のようなものがあります。

咳が出る

運動をしなくなった、歩く距離が減った

興奮すると座り込んでしまう

舌の色が悪い

安静にしていても心拍数が多い(1分間に40回以上)

 

<僧帽弁閉鎖不全症の原因>

僧帽弁とは、心臓の左心房と左心室の間にある弁で、心臓の動きに合わせて開閉し、血液の逆流を防いでいます。僧帽弁閉鎖不全症は、その僧帽弁が正常に閉じないため、左心室が全身に血液を送ろうとしているのに、一部の血液が左心房に逆流してしまう病気です。

この病気は初期段階では症状がほぼ出ませんが、聴診器をあてると正常の心臓の音に加えて血液の逆流する音が聞こえるようになります。また、血液の一部が逆流してしまうために左心室から全身に送られる血液の量が少なくなり、安静にしているときでも心拍数が増えます。この状態は心臓の超音波検査で逆流の様子を見ることができます。

病気が進行すると咳が出るようになります。これは左心房が大きくなり、隣にある気管を圧迫することにより出る症状です。この状態はレントゲン検査で確認することができます。また、全身に送られる血液量が減少することで体に供給される酸素量が減り、運動を嫌がる・興奮時に倒れるといった症状があらわれることもあります。

さらに悪化すると左心房への血液の逆流が多くなり、肺から左心房へ送られるはずの血液が肺に溜まってしまう肺水腫という状態になります。肺水腫になると呼吸による酸素の取り込みが正常に行われず、呼吸困難になります。わかりやすい症状としては、舌の色が悪くなり、口を大きく開け苦しそうにしている様子が見られます。このような状態になったら緊急事態なので、様子を見ていてはいけません。早急に治療が必要です。

 

<知立市のなんよう動物病院の僧帽弁閉鎖不全症治療>

僧帽弁閉鎖不全症の根本治療は心臓外科手術です。しかしながら手術の難易度や実施できる病院が少ないこと、また費用が非常に高額になるため、内科治療をおこなうケースが多いです。それでも完治を希望される飼い主様には、県内の心臓外科が可能な病院をご紹介することができますので、ご相談ください。

僧帽弁閉鎖不全症は内服治療によって完治する病気ではありませんが、症状が軽いうちから薬やサプリメントを使用することで心臓の機能をサポートし、負担を軽減して病気の進行を遅くすることができます。

僧帽弁閉鎖不全症はステージA、B、C、Dの4つの病期に分けられ、内科治療の開始が推奨されているのはステージB2からです。ステージの判定には、聴診だけでなくレントゲンや超音波検査による心臓の形態評価が必要ですので、かかりつけの先生が聴診だけして「心臓が悪そうだからお薬出しますね。」と言ったら「ちょっと待った!」と言えるようにしましょう。

僧帽弁閉鎖不全症は小型犬での発症が多く、小型犬を飼われている方には特に気を付けていただきたい病気の一つです。また小型犬は気管に関わる病気も発症しやすいですから、検査を受けることで一緒にチェックすることができます。

すでに治療中の方も、症状がひどくなったなと感じた場合はすぐにご相談ください。

早期発見・早期治療で元気に長生きできるようサポートさせていただきます。

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