犬の腎不全・腎臓病の症状と原因、治療について|獣医師が解説

  • 2022年11月24日
  • 最終更新日 2023年4月21日
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知立市、刈谷市、安城市、豊田市、名古屋市のみなさんこんにちは。

愛知県知立市のなんよう動物病院の院長鈴木です。

今回は、犬の腎不全・腎臓病の症状と原因、治療について、説明をさせていただきます。

<腎不全とは>

腎臓は体に必要のないものを尿中に排出し、必要なものを再吸収することで適切な濃度の尿を作る働きがあります。その働きが障害され、血中の腎毒性物質が増加してしまっている状態を腎不全と言います。

近年では急性腎不全のことを「急性腎障害」、慢性腎不全のことを「慢性腎臓病」と呼ぶこともあります。また腎毒性物質が血中に増加した状態のことを「尿毒症」と言います。

 

<腎不全の症状>

腎不全の症状には以下のようなものがあります。

食欲や元気の消失

嘔吐、下痢などの消化器症状

脱水

口が臭い

多飲多尿(初期)

乏尿、無尿(末期)

 

<急性腎不全の原因>

急性腎不全の原因として、以下のようなものがあります。

・脱水や出血などによる腎臓への血流の減少

・腎臓そのものの障害(例:細菌感染による腎盂腎炎、レプトスピラ症、腎毒性物質の摂取、自己免疫疾患による腎臓構造の破壊、腫瘍など)

・尿管や尿道の閉塞による排尿障害

犬の急性腎不全の原因は約45%が毒物や薬物、約45%が感染、残りの10%が免疫疾患だったとする報告もあります。

これらの原因がすぐに解除されない場合、慢性腎不全に移行する場合があります。

 

<慢性腎不全の原因>

上記のように急性腎不全から慢性腎不全に移行する場合がありますが、症状がなくゆっくりと腎臓病が進行していくケースもあります。

慢性腎不全は基礎疾患として、心臓疾患や消化器疾患(特に膵炎)、歯周病などが関与することが多いとされています。また細菌性膀胱炎や尿石症なども併発することが多い病気です。

慢性腎不全のステージは4つに分類され、一般的に実施される血液検査の項目を使用してご紹介します。

ステージ1:血中クレアチニン濃度が<1.4mg/dL

ステージ2:血中クレアチニン濃度が1.4~2.8mg/dL

ステージ3:血中クレアチニン濃度が2.8~5.0mg/dL

ステージ4:血中クレアチニン濃度が>5.0mg/dL

※血中クレアチニン濃度は筋肉量に依存するため、筋肉量が少ない小型犬や高齢犬では実際よりも低く数値が出ることがあります。

 

<知立市のなんよう動物病院の腎不全治療>

まずは、急性腎不全の治療から解説していきます。急性腎不全治療のポイントはとにかく原因を究明し、そこに対するアプローチを行うことです。出血が原因であれば出血点を探して止めに行く必要がありますし、細菌感染であれば抗生剤を使用します。また尿道結石などで尿が出ない状態であれば、手術で結石を取り除くことも必要でしょう。これらの原因に対する治療とは別に点滴をしてあげることが非常に重要です。急性腎不全時は多くの場合、脱水が重度になりやすく血中のミネラルバランスが大きく乱れます。そのため、点滴を行い脱水の改善とミネラルバランスの補正が必要となります。

また尿が減ってしまい乏尿・無尿の状態になった場合は、腎臓の機能が回復して尿の生成が再開されるまでの間、人工透析を行う必要があります。ですが、人工透析の機械を持っている病院はまだまだ少なく、実施できる施設が限られてしまっているのが現状です。

次に慢性腎不全の治療について解説します。慢性腎不全の治療は出ている症状に合わせた治療をオーダーメイドで行っていきます。

・療法食

慢性腎臓病の治療の中で最も平均余命を伸ばしたのは療法食への変更です。腎臓病は食事管理が非常に重要となりますので、できる限り腎臓用療法食へ変更していただくことをおすすめしています。

・蛋白尿

腎臓のろ過機能に異常が出ると、本来であれば血中から出てこないはずのタンパク質が尿中に漏れてくることがあります。尿中へのタンパク質の漏出はそれ自体が腎臓病を悪化させる要因ともなりますので、お薬を用いてタンパク質の量を抑制することが必要です。

・高血圧

腎臓病が進行すると体は腎臓への血流を保とうとするため、血管を締めて血圧を上げようとします。これが全身の高血圧につながります。全身性高血圧は心臓病の悪化や重症の場合は脳出血につながることもあるため、重度の高血圧がわかった場合は血管拡張剤や血圧降下剤を使用して、コントロールを行う必要があります。

・高リン血症

血液検査でIP(リン)の値が継続して高い場合には、リンの吸着剤を使用します。リンは基本的にほぼ全ての食べ物に含まれていますので、吸着剤を使用することで腸の中で食べたものからリンが吸収される前に吸着剤がリンを吸ってくれます。これにより体内へ吸収されるリンの量が減少し、血中のリンの濃度を下げることができます。

・貧血

慢性腎臓病が進行すると、貧血を起こすことがあります。慢性腎臓病で起こりやすい貧血は鉄欠乏性貧血と腎性貧血の2つです。鉄欠乏性貧血は血液検査の結果から想定することができ、鉄分を補うサプリメントを用いて治療が可能です。また腎性貧血は腎臓から出る造血ホルモンの分泌量が少なくなることで骨髄での赤血球の生成が減少し、貧血になります。この場合は、腎臓から出るホルモンと同じような働きのホルモン剤を注射で投与してあげることができます。

・その他

その他の症状としては尿毒症により胃潰瘍が発生することがあります。胃潰瘍への対策として胃酸分泌を抑制する薬や胃粘膜を直接保護する薬を使うことがあります。

腎臓病は早期に発見できれば、さまざまな対処法があるため長期に管理することができる病気です。調子が悪くなってから発見された場合、できる治療が限られてしまうだけでなく障害を受けた腎臓組織が元に戻らなくなってしまうことも多いです。

定期的に健康診断を受けて、早期発見・早期治療に結び付けられるようにしましょう!

 

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