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こんにちは!知立市・刈谷市のなんよう動物病院の院長の鈴木です。
今回は、みなさんも聞き馴染みのある「わんちゃんとねこちゃんの避妊手術」について、ご説明したいと思います。
避妊手術の最大の目的は、ホルモンを分泌する臓器である卵巣を摘出することで女性ホルモンが原因となって起こる病気を予防することにあります。女性ホルモンの影響により発生する病気は命の危険が伴うような重大なものもありますが、適切な時期に避妊手術を行うことで発生のリスクをほとんど0にすることが可能です。
避妊手術によって予防できる病気
・子宮蓄膿症(子宮に膿がたまる病気)
・乳腺腫瘍
・卵巣腫瘍
以上の3つが獣医師がよく診断するメジャーな病気かと思います。乳腺腫瘍は猫ちゃんでは特に悪いものが多く、9割近くが悪性の乳腺癌と診断されます。また卵巣腫瘍になるとホルモン分泌が過剰になり、皮膚の脱毛につながるケースもあります。
乳腺腫瘍は避妊をしていない女の子ではもっとも多く発生する腫瘍で、初回発情前に手術することが乳腺腫瘍の発症を確実に防ぐことができる唯一の手段です。
こちらのページでは子宮蓄膿症や乳腺腫瘍について、より詳しく説明しています。
一方、避妊手術を行うことで起こり可能性のあるデメリットは次のようなものがあります。
・体重増加(一般的に20〜30%くらい体重が増えやすくなると言われています。)
・頻尿、失禁が見られることがある(術後、半年から数年後に陰部からポタポタと垂れるような失禁が見られるようになることがあります。)
・麻酔のリスク
・手術をしてしまうと繁殖ができなくなる
なんよう動物病院では体がある程度できてくる生後6ヶ月前後を手術の時期としてオススメしています。「体の成長を待つのであれば1歳になってから」と言われる飼い主様もいらっしゃるのですが、動物の初回の発情は早い子だと生後6ヶ月過ぎから来てしまうこともあります。そのため、乳腺腫瘍などの確実な予防効果を狙うのであれば、生後6ヶ月で手術を行うのが最もいい時期と考えています。
避妊手術を行うためには全身麻酔が必要になります。なんよう動物病院では、麻酔をかける全てのわんちゃん、ねこちゃんに術前の検査を推奨しています。若い子であれば血液検査のみを実施していますが、高齢のわんちゃん、ねこちゃんではレントゲンや超音波検査も実施し、より詳しい検査を行なっています。麻酔で使用する薬は肝臓で代謝を受け胆汁から排出されるものや、腎臓から排出されるものがあります。事前にこれらの臓器の機能が正常かどうか、また貧血や炎症などがないかどうかを調べることで、使っていい麻酔薬かどうかを判断し、安全な麻酔管理ができるようになしています。
当院では手術前に身体検査や血液検査を含んだ術前検査を実施させていただいています。若い子では血液検査のみ実施していますが、高齢の子の手術ではレントゲンやエコー検査も同時に行なっています。これは、避妊手術を目的とした検査で他の病気が見つかる可能性が高いからです。実際に術前検査を行い、腫瘍が見つかった子もいました。
この検査で麻酔がかけられるコンディションと判断した場合は、手術の日程を決めていきます。基本的には手術前検査から1週間以内を手術日としています。
手術の前日のご飯は夜9時までに済ませていただき、その後はお水のみを与えるようにしてください。夜遅くに食べたご飯は胃の中に残っていることがあり、麻酔をかけることで嘔吐してしまう可能性があります。麻酔中の嘔吐は自分で飲み込むことができないため誤嚥性肺炎につながるリスクが高いです。絶食時間はしっかり守りましょう!
当日の朝は前日の夜に引き続き、もちろん絶食です。当院では固形フードの代わりになる栄養補給のためのミルクをお渡ししていますので、こちらを飲ませてあげてください。従来では手術当日の朝晩は絶食というのが当たり前でしたが、当日の栄養補給をすることで術後の回復に違いが出ることがわかってきています。ミルクは朝9時までに飲ませてあげてください。
ご来院は朝10時までにお願いしています。ご来院後、飼い主様にその日の様子をお伺いしてからお預かりします。その後、当日の身体検査を実施し獣医師が最終的に麻酔をかけても大丈夫と判断してから、麻酔の準備に取り掛かります。早めの時間に来院をお願いしているのは、痛み止めの注射が投与後に効果を発揮するまで1〜2時間ほどかかるためです。
手術は通常、お昼の休診時間中に行います。
猫ちゃんの避妊手術は約15〜20分、わんちゃんの避妊手術は30分前後で終了します。
飼い主様のご希望があれば、手術終了時にお電話もしくはLINEにてご連絡を差し上げています。LINEの場合は動画を添付することも可能なため、ご好評いただいています。
手術後は入院室で状態の確認を行います。術後の様子に特に問題がなければ、猫ちゃんの場合は当日退院となります。
わんちゃんは一泊お預かりさせていただき、翌日に傷口の確認をしてからお返しとなります。
下の写真のように皮内縫合を行った子は、1週間後に傷口のチェックをさせていただいています。皮膚を糸で縫っている子は10〜14日後に抜糸を行います。
なんよう動物病院では手術中は最低3種類、術後は2種類の痛み止めを使用し、極力痛みがないように配慮して手術を行なっています。特に術後すぐは傷口の周りに局所麻酔を注射しているため、ほとんど痛みを感じることはありません。
なんよう動物病院では、基本的にわんちゃんもねこちゃんも卵巣のみを摘出する「卵巣摘出術」を実施しています。
「避妊手術って卵巣も子宮も全部取るんじゃないの!?」
他の病院さんで避妊手術を受けられたことのある飼い主様からはよくこういった質問をいただきます。実は避妊手術の摘出目的である女性ホルモンを出す臓器というのは、卵巣なんです。ですので、卵巣さえキチンと処理をして摘出していれば、術後の子宮の病気や乳腺の病気は起こりません。卵巣のみを摘出した場合と卵巣と子宮の両方を摘出した場合では両者に差はなく、むしろ卵巣と子宮を摘出する場合の方が出血リスクが高かったとする報告もあります。
当院では、年間200例ほどのわんちゃん、ねこちゃんの避妊手術を実施していますが、これまでに術後の発情回帰などのトラブルは一回もありません。
初回発情前のわんちゃん、ねこちゃんは上記のような卵巣摘出術をオススメしていますが、発情を経験している子には卵巣子宮全摘出術を推奨しています。発情が起こることで子宮の形の変化が起こることがあるからです。
また、卵巣だけを取り出す場合は傷口が小さくなるため、手術時間を短くすることができ動物たちの体の負担も軽くなります。下にわんちゃんとねこちゃんの術後の写真をお見せします。
上のわんちゃんは手術の翌日、下のねこちゃんは手術直後の写真です。
傷口が小さくなったことで、皮内縫合という特殊な縫い方をして表に糸が出てこないようにしています。これにより、術後にカラーやウェアをつける必要がなく、いつも通りの生活を送ることができます。
当院では皮内縫合をする子の条件として、
・ある程度皮膚の厚みがあること
・術後、大人しくしていられる子
・傷口がある程度小さいこと
としています。皮膚の下を縫うのでペラペラの皮膚では縫うことができません。また、元気が良すぎて術後に大暴れしてしまう子は傷口が開く可能性があるため、皮膚をしっかり縫わせていただくようにしています。
また、なんよう動物病院では極力糸を体の中に残さない手術を行なっています。現在、使用されている糸は過去に使用されていた糸と比べると体の反応が起こりにくいものになっていますが、それでも犬種によっては、縫合した糸に反応して炎症が起こってしまうことがあります。こういった事態を防ぐため、血管を糸で結ぶのではなく電気と熱の力を使って血管をシーリングできる装置を導入しています。下の写真は犬の去勢手術の様子ですが、避妊手術でも同じように血管を止めています。
当院では様々な工夫を行い、わんちゃん、ねこちゃんの負担をできる限り軽くする手術が行えるよう努力を重ねています。麻酔をかけるのが不安な飼い主様や本当に避妊手術をしたほうがいいのかわからないといった飼い主様はぜひなんよう動物病院までご相談ください!
院長の鈴木でした!