【外科】犬の脾臓摘出

  • 2019年11月12日
  • 最終更新日 2023年5月12日
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今回は健康診断で偶然見つかった脾臓の腫瘤を摘出したウェスティの子をご紹介します。

【症例】

ウェストハイランドホワイトテリア、14歳、去勢雄

【診断】

脾臓腫瘤の診断は多くの場合、開腹手術で脾臓を摘出後に病理検査に提出して診断がつきます。

今回は健康診断の腹部超音波検査で脾臓にしこりが見つかりました。脾臓のしこりが厄介なのは一度破裂してしまうと良性でも悪性でも破裂部分から大量出血を起こし、基本的には外科で摘出しない限り失血死してしまうところです。また、悪性腫瘤の場合は破裂した時点で腫瘍細胞が腹腔内に飛び散ることになりますから、その後の対応が変わってきます。

下のエコー写真は実際にしこりを発見した時のものです。

【治療】

さきほどお話ししたように、治療の基本は脾臓を摘出してしまうことです。

今回は術中の写真を撮るのを忘れてしまいましたので、摘出した脾臓の写真だけお見せします。中央に大きなしこりとその右に小さなしこりがありますね。エコーで見えていたのは中央の大きなしこりです。

幸い、この子のしこりは良性病変でしたので、これで今後の治療は必要ありません。

犬の脾臓腫瘤は、2/3が悪性腫瘍であり、1/3が良性です。良性の場合、脾臓の過形成や血腫として診断されます。これらは一度取ってしまえば、悪さはしません。悪性腫瘍の2/3が血管肉腫と言われています。犬の脾臓血管肉腫は中高齢の大型犬でよく見られます。脾臓血管肉腫は心臓、肝臓、肺に転移しやすいと言われており、脾臓の腫瘤として発見された時には他の臓器に転移していることもあります。

摘出後の病理組織検査で脾臓血管肉腫と診断された場合、抗ガン剤治療を受けることで延命が期待できるとされています。

とにかく、この病気は早期発見してあげて摘出するしかありませんので、定期的な健康診断をおすすめいたします。

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