【皮膚科】犬の皮膚リンパ腫

  • 2021年4月21日
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知立市・刈谷市・安城市のなんよう動物病院です!当院では一般診療のほか、犬猫の皮膚病治療に力を入れています。

皮膚病の中でも最も悪性度が高い部類に入る皮膚リンパ腫の症例です。今回、ご紹介するフレンチ・ブルドッグの子はもともと全身の痒みを主訴にご来院されました。その時の診断名は「犬アトピー性皮膚炎」でしたが、当院で治療を継続していく中で新しい病変ができ、新たに皮膚リンパ腫と診断しました。

【症例】

フレンチ・ブルドッグ、メス、14歳齢

【症状・診断】

もともとあった痒みの病変は治療を行うことでなくなっていたが、新しくじゅくじゅくするようなところが増えてきた。

新しくできたところを気にしている様子。

 

 

口元と手足に赤いしこりがたくさんできているのがわかりますね💦このしこりの表面から細胞を取ると、こんな感じに見えます。

見慣れている先生が見れば、皮膚の見た目と合わせてすぐに「これ、やばいやつだわ」と気づきます。

細胞診断を元に確定診断を得るために、皮膚の病理検査も実施させていただきました。その結果、

皮膚リンパ腫」と診断がつきました。

犬の皮膚リンパ腫には大きく分けて3つの分類があります。(人では20以上の分類に細かく分けられています)

1、菌状息肉腫(きんじょうそくにくしゅ)

2、パジェット病様細網症

3、セザリー症候群

皮膚の構造は表皮、真皮と皮下組織の3層構造になっています。菌状息肉腫は表皮と真皮に腫瘍細胞が浸潤する病気です。パジェット病様細網症は表皮のみに限局して腫瘍細胞が浸潤します。特にフケだけが出ているリンパ腫にこのタイプが多い気がしています。セザリー症候群は菌状息肉腫の亜型として考えられており、血液中にも腫瘍細胞が出てきてしまっている状態です。そのため、3番目のセザリー症候群が最も悪性度が高いリンパ腫となっています。

今回は、表皮と真皮に腫瘍細胞が出現していましたが、血液中には見られなかったため、菌状息肉腫型と判断しました。

【治療】

犬の皮膚リンパ腫の治療は抗がん剤がメインとなります。近年、抗がん剤プロトコールの治療効果の比較を行った論文が発表されました。その論文ではこれまで推奨されていた治療法と同等の効果をもつ治療法が紹介されていました。しかしながら、完全寛解(全く症状が出ていない状態まで病気を改善させることです)状態を長く維持することは難しいのが現状です。

その他、免疫調節作用をもつ注射を打つことにより、腫瘍が原因で起こる食欲の低下や元気の喪失を緩和できるといった報告もあります。ただし抗がん剤ではないため、腫瘍そのものを攻撃できるわけではありません。

この症例は抗がん剤による治療を飼い主様が希望されなかったため、ステロイドの高用量投与を行い、治療をしていきました。下の写真はステロイドでの治療を開始して、1ヶ月経過した時のものです。

治療開始前と比べ、皮膚の病変がかなりキレイになっていることがわかりますね!しかし、やはり悪性度の高い腫瘍だけあってこの状態を維持できたのは3ヶ月ほどでした。

ステロイドでの治療の平均余命が2ヶ月と言われている中、この子は治療開始後、8ヶ月間にわたって元気や食欲が落ちることなく、過ごすことができました!

皮膚リンパ腫は診断まで平均5~6か月かかるといわれています。初期の病変が他の日常的によく見る皮膚病と似ていることもあり、特に検査をせず抗生剤とステロイドを使用されていることが多いからです。この子はリンパ腫が発病したときに当院にかかっていてくれたため、すぐに怪しい病変に気づくことができ、診断までスムーズ進められた結果、8ヶ月間という長期間の生存が得られたのではないかと考えています。

このような命にかかわる皮膚病があることをみなさんに知っていただき、1ヶ月くらい治療を続けても全然よくならない時は膿皮症やマラセチア皮膚炎のようなよくある皮膚病ではなく腫瘍かもしれないと考えてあげてください!

皮膚リンパ腫はいかに早く診断をつけ、治療を開始するかでその子の生活の質が大きく変わってしまいます。今回、ご紹介した子と同じような皮膚の病変を見られましたら、様子を見ずにすぐに病院に相談しましょう!

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