犬と猫の痒みや脱毛などで一般的な治療で改善しない難治性の症例の診断・治療に力を入れている愛知県のなんよう動物病院です。
今回はいつもの皮膚病ではなく、耳の疾患をご紹介したいと思います。
ミニチュアシュナウザー、6歳齢、去勢オス
半年ほど前から右耳を気にして、頭を振ったり床に擦り付けたりする様子が見られる。かかりつけの病院でも耳を見てもらったが異常はなく、原因不明と言われた。
当院でも耳の外観を見たときは非常にきれいで、特に外耳炎などの炎症疾患があるようには見えませんでした。ただ気をつける点としてシュナウザーやトイプードルなどの毛が抜けにくい犬種は耳の中にも毛がびっしり生えているため、外から覗いただけでは中の状態を十分に把握することが難しいことです。
そこでまずは耳道内視鏡を用いて、耳の中を確認してみました。
動画でもたくさんの毛が生えていることがわかるかと思います。手前に少量の耳垢がついていますが、これくらいで耳にかゆみを引き起こすことは稀です。
奥まで進んでいくと、毛とは違う茶色のものがはまり込んでいることがわかりました。
治療は奥にはまったものを取り除けばOKですが、鼓膜の手前で機械を操作するため鎮静をかけてから処置を行いました。カメラについている小さな穴から鉗子(かんし)という先端が開くものを使ってノギを拾い上げています。
ノギを除去した後は鼓膜に異常がないかを確認しています。
鼓膜は透明性が保たれており傷もなかったので、これで処置は終了となりました。
一般的な手持ちの耳鏡では耳道の手前を観察することができても、鼓膜の手前まで詳細に調べることはできません。特に今回のような毛がたくさん生えている犬種では尚更です。
「耳が赤く腫れて硬くなってきている」、「ずっと耳から汁のようなものが出ている」といった症状がある場合はすぐに治療方針を根本から見直す必要があります。
慢性外耳炎を患っている症例の7割以上で中耳炎の併発が見られたとされる報告があるため、外耳炎は長く放っておかない方がいい疾患です。
現在外耳炎の治療でなかなか改善していかない場合は、一度耳道内視鏡を持っている病院に相談してみることをおすすめいたします。