気づかないと重症化してしまうかも!犬の膵炎の症状と原因、治療法について|獣医師が解説

  • 2022年11月25日
  • 最終更新日 2023年4月21日
Pocket

知立市、刈谷市、安城市、豊田市、名古屋市のみなさんこんにちは。

愛知県知立市のなんよう動物病院の院長鈴木です。

今回は、犬の膵炎の症状と原因、当院での治療について説明をさせていただきます。

<膵臓と膵炎とは?>

犬の膵臓は重要な臓器で、2つの主な働きを担っています。1つ目は膵酵素という多くの消化酵素が含まれた消化液を分泌し、食べ物を消化して腸内で吸収しやすくしています。これにより、犬の栄養素の摂取がスムーズに行われます。2つ目はインスリンやグルカゴンといった血糖値を調整するホルモンを分泌する働きがあります。これにより、犬の血糖値が適切に維持されます。

膵炎とは、膵酵素が様々な原因で膵臓の中で活性化し、膵臓自身が消化されて炎症を起こす病気です。犬の膵炎は非常に痛みを伴い、早期発見と適切な治療が必要です。

<膵炎の症状>

膵炎の初期症状としては以下のようなものがあります。

・腹痛

・嘔吐

・食欲不振、元気がなくなる

・下痢

犬が膵炎による強い腹痛を感じていると、散歩に行きたがらない、動かない、鳴き叫ぶ、お腹が張る、抱っこを嫌がるなどの様子が現れます。

写真のようにお尻だけを上げた“ヨガの祈りのポーズ”をすることがあり、強い腹痛のサインです。

膵炎が重症化すると、短期間で死亡につながるような症状を引き起こすことがあります。

・ショック

・呼吸困難

・肝炎、胆嚢炎などの併発

・播種性血管内凝固(DIC)の続発

膵炎は症状が軽度であれば数日間の内科治療で回復が見込めますが、放置して重症化すると合併症により死亡に至ることもある恐ろしい病気です。

 

<膵炎の原因>

膵炎の原因は多岐にわたり、生活習慣や病気によるものが含まれます。

生活習慣による原因

高脂肪食: 油っこい食事や脂肪の高いフード・おやつは、膵臓に負担をかけ、膵炎を引き起こすことがあります。

肥満: 過体重は高脂血症につながりやすく、膵臓に過剰な負担をかけ、膵炎のリスクを高めます。

誤食: 間違って食べた異物が、膵臓に炎症を引き起こすことがあります。

病気による原因

高脂血症: コレステロールや中性脂肪の増加により、膵臓の消化酵素が活性化しやすくなります。

ホルモン異常: 甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症などのホルモンバランスの乱れが、膵臓に影響を与えることがあります。

糖尿病::糖尿病はインスリンの分泌や作用に関与し、膵臓の働きに影響を及ぼすことがあります。

肝臓・胆道系疾患: 肝臓疾患や胆石症などの胆道系の疾患が、膵臓に炎症を引き起こすことがあります。

特に脂肪の多い食べ物を食べた事による急性膵炎の来院が多いです。

若い子でも発症する病気ですが、高齢による消化機能の低下によって膵炎を発症する子もいます。

 

<膵炎の検査・診断>

血液検査

・血球検査::赤血球や白血球の数、ヘモグロビンの濃度などを調べ、全身状態に異常がないか診断します。

・生化学検査:膵臓の機能を示す指標として、アミラーゼやリパーゼの濃度を調べます。これらの酵素は膵炎の際に上昇することが多いため、重要な診断の手がかりとなります。

画像診断

・超音波検査(エコー検査): 超音波を用いて、膵臓のサイズ、形状、内部構造を評価し、腫れや炎症の兆候を調べます。

・レントゲン検査: 膵臓や周辺臓器の形状や位置を観察し、膵炎による変化や合併症の有無を調べます。

 

<知立市のなんよう動物病院の膵炎治療>

膵炎の基本的な治療は膵臓の炎症がおさまるまで、対症療法の内科治療を行うことです。血管からの投薬が多くなるため、基本的に入院管理にて点滴、吐き気どめ、下痢止め、抗炎症薬などの投与を行います。

検査にて膵炎の基礎疾患と疑われる異常が見つかった場合は、そちらも同時に治療を行っていきます。症状、血液検査の結果が良化していけば通院治療で経過観察となります。

 

<早期発見・予防が大切>

高脂肪のフードや過剰なおやつの給与、人の食べ物の拾い食いなどが原因となり膵炎の発症もしくは再発する可能性が高まります。脂質が低く設定されたフードを食べることである程度の予防効果は期待できますが、膵炎を完全に予防することは残念ながらできません。

膵炎自体は珍しい病気ではありませんが、重症化すると命に関わる恐ろしい病気です。

少しの変化に気づいてあげることで早期治療につながります。お腹を痛がる、尻尾を丸める、すぐ座ってしまうなどいつもと変わった様子に気づいたら病院へご来院ください。

 

まとめ

犬の膵炎は、膵臓が炎症を起こす病気で、膵酵素の活性化が原因となります。膵炎の症状には腹痛、嘔吐、食欲不振、元気がなくなる、下痢などがあり、重症化すると命に関わることもあります。

膵炎の原因は生活習慣や病気によるものがありますが、特に脂肪の多い食べ物が関係しています。膵炎の検査・診断には血液検査や画像診断が用いられ、治療には対症療法の内科治療が主となります。

早期発見・予防が大切であり、高脂肪のフードや過剰なおやつ、人の食べ物の拾い食いを避けることが重要です。犬の様子に気をつけ、変化に気づいたらすぐに病院へ連れて行くことが望ましいです。

 

カテゴリー