犬のアジソン病の症状と原因、治療について|獣医師が解説

  • 2023年5月10日
  • 最終更新日 2023年5月12日
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知立市、刈谷市、安城市、豊田市、名古屋市のみなさんこんにちは。

愛知県知立市のなんよう動物病院の院長の鈴木です。

今回は、犬のアジソン病について詳しく解説いたします。その症状や原因について、そして当院での治療法について説明させていただきます。

 

<犬のアジソン病の典型的な症状>

アジソン病の症状は、一見すると他の病気と似ていることが多く、症状だけでは判断が難しいです。以下に、アジソン病が疑われる症状を挙げます。

・元気がない

・嘔吐が続く

・体重の減少

・多飲・多尿(犬の場合は体重×100ml以上/日)

これらの症状が見られる場合、犬がアジソン病(副腎皮質機能低下症)にかかっている可能性があります。

 

<アジソン病とは>

 副腎皮質から分泌されるホルモンが少なくなる病気で副腎皮質機能低下症とも呼びます。副腎皮質から分泌されるホルモンには代謝や免疫、ストレスに対処したりするコルチゾールや、体内の電解質や水分量を調節するミネラルコルチコイドがあります。一般的なアジソン病ではこれらのホルモンの分泌が両方とも低下(定型型アジソン)しますがコルチゾールだけが低下する場合(非定型型アジソン)もあります。アジソン病は上記に挙げたような他の病気でも出るような非特異的な症状を示すことが多く、症状だけではオーナー様自身での判断は難しいと思われます。また、痙攣や失神、虚脱などを起こしている場合、副腎クリーゼ(アジソンクリーゼ)と呼ばれる重度の副腎不全に陥っている可能性がありますのですぐに動物病院を受診してください。

 

<アジソン病が起こる原因>

 原因は完全には解明されておらず9割が特発性だとされています。自己免疫疾患によって副腎が委縮・破壊されることでホルモンの分泌が低下します。また、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)の治療で服用している薬による医原性で起こることもあります。稀ですが脳に問題がある場合もあり、副腎皮質にホルモンを分泌するように促すホルモンであるACTHや、ACTHの分泌を促す刺激ホルモンの分泌が不足することで副腎皮質が委縮します。

 

<アジソン病を適切に治療・管理するためのポイント>

①血液検査

 血糖値や電解質(ナトリウム、カリウム、クロール)の測定を行います。血糖値が低いと意識を失う恐れがあります。電解質では特にカリウムの数値が重要であり、カリウムの数値が高いと心不全につながりますの迅速に対応しなければなりません。

②ACTH刺激試験

 副腎皮質にホルモンを分泌するように促すホルモンであるACTHを投与する前後の犬の血中コルチゾール濃度を測定し、ACTH投与後の血中コルチゾール濃度が基準値未満であればアジソン病と診断します。

③腹部超音波検査(エコー検査)

 お腹に超音波を当てて副腎の大きさ測定します。副腎の委縮が確認できれば診断の手助けとなります。

④CTやMRI

 当院では取り扱かっておりませんが脳の問題が疑われる場合には検査施設をご紹介します。

 

<当院でのアジソン病の治療>

 当院でのアジソン病の治療は、まず血液検査の結果次第で入院していただき、点滴を流しながら薬を投与し状態の安定を目指します。状態の安定が確認できれば退院していただき内服薬での治療を開始します。当院ではフロリネフという薬を用いて分泌が低下しているホルモンを補うようにしています。また海外薬ですが、1ヶ月ほど効果が持続する注射を選択することも可能です。

アジソン病は完治が望めず、生涯にわたる治療が必要ですが、きちんと薬を飲ませ続ければ健常な犬と変わらずに生きていけます。また、治療中は定期的な血液検査やフォローアップが重要です。薬の量や治療方法を適宜調整し、状態を最適なものに保ちましょう。

 

<予防とオーナー様へのアドバイス>

アジソン病は予防が難しい病気ですが、犬の健康管理を徹底することで早期発見が可能です。犬の体調や行動の変化に気を付け、定期的な健康診断を受けることが大切です。

 

 

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