犬の毛周期停止(アロペシアX)とは?診断と治療法について

  • 2021年8月28日
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わんちゃん、ねこちゃんの皮膚病の治療に力を入れているなんよう動物病院です。今回の院長便りでは、多くの飼い主さんが頭を悩ませている犬の脱毛症の代表格毛周期停止(アロペシアX)」について、解説します。

 

毛周期停止ってどんな皮膚病?

毛周期停止(アロペシアX)は犬に起こるかゆみのない脱毛症で、毛が生え変わるサイクルが止まってしまうことで発生します。現在のところ原因は不明とされていますが、特定の犬種に好発することから、遺伝的背景が関連した毛周期の異常であることが予想されています。過去には「未去勢のポメラニアンのオス」に起こる皮膚病と言われていた時期もありましたが、現在では雌雄や避妊・去勢手術の有無にかかわらず、症状が認められています。ポメラニアンやシベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュートといった北欧犬種に多いとされています。国内ではこれらの犬種の他に、トイ・プードルやパピヨンなどの小型犬種でも多く診断されています。毛周期停止によって発生した脱毛は見た目の問題、すなわち美容上の問題であり、わんちゃんの健康状態には影響しないと考えられています。しかし、個人的には本来あるはずの被毛がなくなることで紫外線の暴露量が増加し、長い年月で見たときに皮膚になんらかのトラブルを起こす可能性もあるのではないかと考えています。

 

毛周期停止(アロペシアX)の症状

毛周期停止(アロペシアX)は2〜3歳の若齢犬での発症が多く、初期症状としては首周りや太ももの裏側から脱毛が始まるとされています。この脱毛は頭部や四肢を除くほぼ全身に拡大し、左右対称性に進行していきます。皮膚に色素沈着が認められる場合もあります。被毛がないことによるドライスキンや、皮膚バリア機能の低下による膿皮症の併発を認めることもあります。

毛周期停止(アロペシアX)の診断方法と似た皮膚病

毛周期停止(アロペシアX)を直接診断できる方法はありません。まずは同じような痒みのない脱毛症を示す皮膚病を除外する必要があります。毛周期停止と同様に、首や太ももの裏側から脱毛の始まりやすい皮膚病をご紹介します。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモン分泌量の低下により脱毛が起こる病気です。体幹部以外にも鼻筋や尾部にも脱毛を認めることがあるのが特徴的です。また甲状腺機能低下症になると脂質代謝にも異常を起こすことがあり、その場合は脂漏やフケを認めることがあります。皮膚症状以外にも運動量の低下、肥満、低体温など様々な症状が見られます。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

副腎皮質機能亢進症は、脳の下垂体もしくは副腎腫瘍により過剰なステロイドホルモンが分泌される病気です。体幹部の脱毛とともに、皮膚萎縮による血管の明瞭化、傷の治癒遅延、石灰沈着などが見られることがあります。また皮膚以外の症状として、多飲多尿、多食、過呼吸、腹囲膨満といった異常が見られます。

性ホルモン失調症

去勢もしくは避妊手術を行なっていない高齢犬で見られる病気で、皮膚には体幹部の脱毛や脂漏が見られることがあります。

休止期脱毛

毛の生え変わりのサイクルが毛の抜けやすい「休止期」と言われる段階でストップしてしまい、脱毛につながる皮膚病です。原因として、発熱、薬物、麻酔、栄養不良、手術、出産など様々なものが報告されています。

 

以上の疾患を検査によって除外した後は、皮膚病理検査を行うことをお勧めしています。その理由としては、他の皮膚疾患の除外の他に毛周期停止では皮膚サンプルを採取した部分から発毛が認められることがあるためです。この現象が見られた子は後で解説するマイクロニードル法での治療効果が高いと感じています。

 

毛周期停止(アロペシアX)の治療法のご紹介

避妊去勢手術

未去勢もしくは未避妊のわんちゃんの場合はまずこちらを検討しています。毛周期停止はホルモンの影響により発症すると考えられているためです。一般的に術後3ヶ月ほどで発毛が認められます。

マイクロニードル法

局所麻酔もしくは全身麻酔下で行う処置です。細かい針のついたローラーで皮膚を刺激することで細胞を活性化させ、発毛を促します。ポメラニアンでの処置では6週間以内に発毛が認められたとの報告があります。

お薬による治療

ホルモンを調節する薬を内服することで発毛が認められる場合があります。ただし、ホルモンを調節するお薬は副作用の危険性があるものもあるため、状態の細かなチェックと定期的な血液検査が必須です。

サプリメントによる治療

発毛効果のあるサプリメントがいくつか報告されています。お薬と違い、副作用がほとんどないのがメリットです。

体質改善、スキンケア

報告は多くありませんが、食事療法、炭酸泉浴、酸素カプセル、レーザー照射、鍼灸、オゾン療法などの体質改善やスキンケアを行うことで発毛を認めることがあります。

 

まとめ

今回は痒みのない脱毛症の代表である「毛周期停止(アロペシアX)」について、解説しました。最近、セカンドオピニオン、サードオピニオンでご来院されるわんちゃんでよく見るのは複数の種類の内服薬やサプリメントを同時に何ヶ月も使用し続けているということです。毛周期停止は治療法だけでも選択肢が多くあり、どれがその子にとって効果を見せてくれるのかは使ってみないとなかなかわかりません。一般的に毛周期停止の治療は、3ヶ月間同じ治療を継続し反応がなければ次の治療に切り替えることが推奨されています(たまに半年くらいしてからようやく生えてくる子もいます)。ですので、「これの薬はダメだったからこっちも追加してみましょう」や「このサプリメントはあまり効果がなかったから、もう一つ試してみましょう」みたいな複数種類のお薬やサプリを使用すると、どれが効いているのかわからなくなってしまいます。たくさんのお薬を飲ませるのは飼い主様にとって負担ですし金額も大きくなっていってしまうため、どんどんお薬を増やしていくことになりそうならいったん引き算を相談してみるのもいいと思います!

 

犬猫の治らない皮膚病治療なら、なんよう動物病院へ!

当院では年間100例以上の皮膚病に悩むワンちゃん、ねこちゃんにご来院いただいております。これらの豊富な経験から同じような見た目の皮膚病であっても、経過や痒みの程度、お薬に対する反応性などを総合的に判断してより的確な診断が下せています。そのためには診察に入る前にお時間をいただき、しっかりと問診を行ってワンちゃん、ねこちゃん のこれまでの経過や状態をお聞きする必要があります。当院では初診時に限り、通常の診療時間ではない昼間の時間に「皮膚科特別診療枠」を設けており、1〜2時間かけてじっくりお話を伺うようにしています。

皮膚病の治療は他の疾患に比べ、時間がかかることが多い診療科です。特に症状がよくならないためにセカンドオピニオンを求めてご来院される場合は、治療期間が長期間におよびやすい傾向があります。初回の診察で十分な時間をかけてお話をお聞きし、身体検査と皮膚科検査などの各種検査を漏らさずに実施することで、適切な治療法を早期にご提案し改善までの期間を短くすることが可能となっています。

 

今回ご紹介したような症状でお困りの飼い主様は一度、当院までご相談ください!

これまでブログで紹介した子たちをインスタグラムでも紹介していきます!ぜひご覧ください!

こちらからLINEにて、初診のご予約をお取りすることも可能です!

 

院長の鈴木がお送りしました!

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