犬の膿皮症とは?原因と治療法について|知立市のなんよう動物病院

  • 2021年3月3日
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愛知県知立市・刈谷市・安城市の皆さんこんにちは!なんよう動物病院の院長だよりをお届けします!当院では一般診療のほか、犬猫の皮膚病治療に力を入れています。

 

今回は【犬の膿皮症】についてわかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください!

 

 

膿皮症とは?

犬の膿皮症は皮膚の細菌感染による皮膚炎のことをいいます。主にブドウ球菌が原因菌となりますが、時に緑膿菌や大腸菌などが原因となることもあります。膿皮症の原因となる菌は正常な皮膚の上にも存在しており、膿皮症の発生には菌側の問題だけでなく犬側の問題も関係しています。犬の膿皮症は人や猫に比べると圧倒的に発生頻度が高いですが、その要因としては以下のようなことが挙げられます。

  • 人に比べて表皮の層が薄い
  • 細胞間脂質が少ない
  • 分泌腺が発達している
  • 皮膚pHが高い(アルカリ性に傾いている)

これらはあくまで犬の皮膚の特徴であり、これがあるから必ず膿皮症を引き起こすわけではありません。その証拠に膿皮症とは無縁の犬生を送る子がいれば、膿皮症を繰り返し病院に通っている子もいます。それぞれのわんちゃんが膿皮症にかかりやすいかどうかを決定する要因として、犬種、年齢、アレルギーなどの他の皮膚病の存在、ホルモン異常や腫瘍の存在、ステロイドや免疫抑制剤、抗がん剤などの薬剤の使用、高温多湿な生活環境、栄養状態の悪化、間違ったスキンケア(例:過剰なブラッシング)などがあります。これらは再発性膿皮症の原因にもなることがあります。

 

犬の膿皮症は大きく分けると「表面性膿皮症」「表在性(浅在性)膿皮症」「深在性膿皮症」の3つに分類されます。

1、表面性膿皮症

表面性膿皮症はその名の通り、皮膚表面で細菌が過剰に増殖している状態です。この時、体の免疫反応として出てくる白血球は出てきません。そのため、感染は成立していないと考えられており、厳密には膿皮症の定義から外れるとされています。以下に記載してある表在性膿皮症や深在性膿皮症と異なり、シャンプーやぬり薬など外からの治療だけでほぼ改善を見込むことができます。

 

2、表在性(浅在性)膿皮症

表在性膿皮症は表皮や毛包内に細菌が侵入し、増殖することで発生します。若齢犬でよく見られる膿痂疹(のうかしん)、腹部や背部に好発し皮膚の病変が円形に拡大していく表在性拡大性膿皮症、体や足の外側に好発し毛穴に一致した湿疹を形成する細菌性毛包炎があります。

膿痂疹:若い犬でよくみられ、脇や鼠径部(そけいぶ)など毛が少ない部分に見られやすいです。主に表皮内に病変ができるため、毛孔に一致しない膿疱(のうほう)ができることが特徴です。

表在性拡大性膿皮症:主に背中や腹部によく見られ、毛孔や表皮内の病変が円形に拡大していきます。環状のフケを伴った赤み(表皮小環)の形成が特徴です。

細菌性毛包炎:体や手足に好発し、毛包内で細菌が増殖します。毛孔に一致した赤みや膿疱が形成されるため、皮疹の中心から毛が生えていたら細菌性毛包炎にあたります。

表在性膿皮症に似た皮膚病

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌は犬や猫のほか、人にも感染します。感染は保菌動物との接触や土壌、家や飼育小屋などの菌に汚染された被毛や埃などからの接触で成立します。皮膚に侵入した皮膚糸状菌に反応して、感染部では炎症が起こります。また菌を排除しようとする免疫細胞の働きにより、水疱や膿疱が形成されます。

犬ニキビダニ症

ニキビダニは哺乳動物の皮膚に常在すると言われています。ニキビダニは主に毛穴の中に寄生するため、毛穴を中心とする皮膚の変化がよくみられます。脱毛や発赤が毛穴に一致してみられる場合、ニキビダニの可能性を疑います。ニキビダニの増殖に加え二次的な細菌感染や毛包炎を起こすと、皮膚には膿疱が形成されます。

落葉状天疱瘡(らくようじょうてんぽうそう)

落葉状天疱瘡は炎症細胞の浸潤により表皮の細胞間の接着が剥がれることで起こります。初期は膿疱が形成されますが、すぐに潰れてかさぶたになってしまいます。見た目は膿皮症と見分けがつきませんが好発部位が異なるため、膿皮症が出にくい場所に膿疱ができていた場合はこの皮膚病を疑う必要があります。落葉状天疱瘡の好発部位は、鼻稜部(びりょうぶ)や眼の周囲、耳などです。

 

表在性膿皮症でよく見られる皮疹の解説

丘疹

丘疹とは、1cm未満の隆起性病変のことです。膿皮症で見られる丘疹は炎症を伴っているため赤く見えることから、紅色丘疹と呼ぶことがあります。

膿疱

膿がたまった水疱のことを膿疱といいます。見た目は白色から黄色のできもののように見えるため、「ニキビができた」と言われる飼い主様もいらっしゃいます。

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表皮小環(ひょうひしょうかん)

膿疱が破れて天蓋のふちが残り、環状のフケがくっついているものを表皮小環といいます。

 

3、深在性膿皮症

深在性膿皮症は皮膚の深い部分で菌の感染が起こったときに発生します。毛包を中心とした皮膚の深い部分に見られる強い炎症で、せつ腫を形成することがあります。せつ腫とは複数の毛包を巻き込んだ重度の皮膚炎で、さらに深い部分まで炎症が到達すると蜂窩織炎(ほうかしきえん)という状態になります。深在性膿皮症では皮膚の腫れたところが膿疱や血液を含んだ水疱となり、これらが壊れると瘻管(ろうかん)を形成して血液が混じった膿性の分泌液が出てくるようになります。深在性膿皮症は表在性膿皮症に比べ、炎症が強いため痒みだけではなく痛みを伴うことがあります。また炎症が拡大すると発熱や元気の消失、リンパ節の腫れなど全身の症状が見られるようになることもあります。重度の深在性膿皮症では潰瘍を形成するため、治癒後には瘢痕化することがあります。瘢痕には毛包や皮脂腺などの皮膚構造が再生されないため、発毛は期待できません。

 

深在性膿皮症に似た皮膚病

深在性真菌症

皮膚糸状菌が皮膚の深部で感染増殖するほか、クリプトコッカスやアルペルギルスなど特殊なカビによって起こります。ステロイドや免疫抑制剤の投与を受けている免疫抑制状態のわんちゃんでは発症のリスクが高くなります。

 

異物肉芽腫

外傷などにより異物(植物のトゲや石、ガラス片など)が皮膚に刺入した場合や、慢性的な舐め行動により毛包が破綻し皮膚の中に毛の構造が落ち込んでしまった場合に炎症を起こすことがあります。皮膚に入り込んだものに付着していた細菌により深在性膿皮症を併発することもあります。原因となっている異物を摘出しない限り、根治は難しいでしょう。

脂肪織炎

皮下脂肪が様々な原因により炎症を起こし、皮膚から瘻管を通じて脂性の膿汁が排出される皮膚病です。原因は感染、免疫異常、ワクチン接種、注射、異物、手術、膵臓疾患などがあります。特に無菌性結節性脂肪織炎と呼ばれる原因不明の炎症はダックスフンドに好発します。

 

腫瘍

皮膚の深部にできる様々な腫瘍性皮膚疾患が深在性膿皮症と似たような症状を引き起こします。

 

表在性膿皮症の検査・診断

細胞診

スライドグラスやセロファンテープを用いて、皮膚の細胞を採取し顕微鏡で確認します。膿疱がある場合は針で膿疱を破り出てきた膿をスライドグラスにくっつけます。膿疱がない場合は表皮小環のフケを剥がしその下から検体を採取することもできます。スライドがあてにくい部分や病変が乾燥していてスライドグラスにうまく付着してくれない時には、セロファンテープで検体を採取します。採取した検体は特殊な染色液で染色し、顕微鏡で観察します。表在性膿皮症では細菌の増殖とともに白血球が多数見られます。特に好中球と呼ばれる白血球の仲間が細菌を取り込んでいるのが確認できると膿皮症が確定できます。また、新鮮な膿疱から採取した検体で好中球はあるが細菌が見られない場合は、落葉状天疱瘡などの特殊な疾患の可能性が出てくるため、一般的な皮膚検査だけでなく皮膚自体を採取する病理検査を行う必要があります。

 

毛検査・皮膚搔爬検査

毛検査は病変部の毛を引き抜き、毛幹や毛根を観察する検査です。また皮膚搔爬検査は皮膚の表面を削り、その中にカビや寄生虫がいないかどうかを調べる検査です。これらの検査は膿皮症と似た皮膚病である皮膚糸状菌症と犬ニキビダニ症が「ない」ことを調べるために必要です。膿皮症が他の皮膚病と併発していることもあるため、細胞診だけ行い膿皮症を見つけて他の皮膚検査を飛ばしてしまうと、これらの皮膚病を見逃してしまう可能性があります。

 

細菌培養検査・薬剤感受性検査

表在性膿皮症と診断した場合には、感染している菌がどのような種類なのかを特定した方が良いとされています。表在性膿皮症の主な原因菌であるブドウ球菌は薬剤耐性を持ったものが出てきており、近年では多くの抗生剤が効かない多剤耐性菌も報告されています。このような背景から診断時に細菌培養検査と薬剤感受性試験を行いどのようなブドウ球菌を持っているのかを把握しておくことは、適切な抗生剤を使用する指標になります。

 

深在性膿皮症の検査・診断

深在性膿皮症では症状が似ている皮膚病の中から見た目だけで区別・判断することが難しく、鑑別診断のリストの中に腫瘍性の皮膚病が含まれることから、早期に皮膚病理検査と細菌・真菌の培養検査が推奨されています。皮膚の病理検査は皮膚の表面だけをとるパンチ生検と異なり、深部までくり抜く必要があるため、病変の摘出と診断を兼ねることもあります。

 

治療

犬の膿皮症の治療は大きく分けて

  • 抗生物質による治療
  • 消毒薬による治療
  • シャンプーによる薬浴治療

に分かれます。

抗生物質による治療

抗生物質を用いる場合、病変が体の広い範囲に拡大していれば内服薬や注射薬を使用し、一部にとどまっていればぬり薬を使用するようにしています。内服の抗生剤には、使用していい推奨段階が示されており、いきなり強度の強い抗生剤を使用することはありません。まずは膿皮症の原因であるブドウ球菌に効くと言われているベーシックな抗生剤を使用し、その効果を見ます。この時点で効果がない場合や過去半年以内に抗生剤の使用歴があるワンちゃんに関しては、薬剤感受性試験を行います。膿皮症における抗生剤の使用期間は3〜4週間、もしくは症状が消失してからさらに1週間継続するのが推奨されています。よく1〜2週間でやめてしまったという飼い主さんがいらっしゃいますが、それでは少し投薬期間が短く再発のリスクがあります。ぬり薬では直接皮膚に薬をつけることができるため、高濃度で薬剤を届かせることができます。

消毒薬による治療

使用法は塗り薬の抗生物質と同じですが、消毒薬の方がよりリスクが低いと考えています。塗り薬の抗生物質も飲み薬と同じように薬剤耐性菌が発生してしまう可能性がありますが、消毒薬では耐性菌の発生はかなり稀です。そのため、当院では薬剤感受性試験で効く抗生剤が判明するまでの間、消毒薬で膿皮症が悪化しないようにしてもらっています。また、耐性菌ができにくいという特徴を活かして、長期間使用する必要がある子には積極的に使用していただいています。

シャンプー療法

シャンプー療法では、抗菌シャンプーを用いて体表の菌を殺菌します。通常、週2回から3回の頻度でシャンプーを行い、膿皮症の改善具合を見ながらシャンプーの頻度を減らしていきます。皮膚がデリケートな子はオゾンバブルや炭酸泉浴を併用することにより、効果的に薬浴を行うことができます。

どんなシャンプーを使ったとしても、洗浄後には必ず保湿が必要です。よく青緑色っぽいシャンプーを処方されて、それだけで洗っていらっしゃる飼い主さんがみえます。私たち人間が洗顔後に何も付けずに放置していたら、顔をカピカピに乾いてしまいますよね?わんちゃんも同じでシャンプー後には皮膚は多かれ少なかれダメージを受けていて、乾燥している状態になっているのです。そのため、シャンプー後には必ず皮膚の保湿をしてあげましょう!保湿剤の種類は様々で、膿皮症の基礎になっている疾患によって使い分けた方がいいので、相談してください!

 

皮膚病の治療なら、愛知県知立市で皮膚病治療に力を入れているなんよう動物病院へ!

今回は犬の皮膚病の代表格である「膿皮症」について書きました。おそらく獣医師であれば、膿皮症を見たことがないという先生はいないくらいポピュラーな皮膚病ですが、それと同時に再発を繰り返したり慢性化すると本当に頭を悩ませる皮膚病でもあります。初期の治療の入り方と裏にどのような病気が隠れているかを見抜くことが再発させない大事なポイントになりますので、「いつも皮膚の赤みで見てもらってるけど、いつも同じ治療だな」と感じられたら、一度セカンドオピニオンで他の先生の意見を聞いてみるのもいいかもしれませんね。

 

当院では年間100頭以上の皮膚病に悩むワンちゃん、ねこちゃんにご来院いただいております。これらの豊富な経験から同じような見た目の皮膚病であっても、経過や痒みの程度、お薬に対する反応性などを総合的に判断してより的確な診断が下せています。そのためには診察に入る前にお時間をいただき、しっかりと問診を行ってワンちゃん、ねこちゃん のこれまでの経過や状態をお聞きする必要があります。当院では初診時に限り、通常の診療時間ではない昼間の時間に「皮膚科特別診療枠」を設けており、1〜2時間かけてじっくりお話を伺うようにしています。

皮膚病の治療は他の疾患に比べ、時間がかかることが多い診療科です。特に症状がよくならないためにセカンドオピニオンを求めてご来院される場合は、治療期間が長期間におよびやすい傾向があります。初回の診察で十分な時間をかけてお話をお聞きし、身体検査と皮膚科検査などの各種検査を漏らさずに実施することで、適切な治療法を早期にご提案し改善までの期間を短くすることが可能となっています。

当院の症例集ページはこちらから!

今回ご紹介したような犬の膿皮症でお困りの飼い主様は一度、当院までご相談ください!

 

院長の鈴木がお送りしました!

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