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冬の寒さが一段と厳しくなり、お部屋の中で暖房をフル稼働させて過ごす時間が増えてきました。この時期、飼い主様の多くは「乾燥」を気にされますが、その視線は主に自分自身の肌や喉、あるいは愛犬・愛猫の肉球などに向いていることが多いのではないでしょうか。
しかし、実は意外な場所が暖房による「乾燥」と「温度変化」の影響を受けています。それが、動物たちの「耳」です。
「夏場はあんなに耳を痒がっていたのに、冬になって落ち着いた気がする」
「冬だから耳の臭いも気にならないし、大丈夫だろう」
そう思ってケアを休止している間に、耳の奥では炎症がじわじわと進行し、春の訪れとともに爆発的な悪化を招くケースが少なくありません。
今回は、春の本格的なアレルギーシーズンを迎える前に解決しておきたい「慢性外耳炎」について、冬の環境が与える影響を含めて詳しく解説します。
外耳炎は、耳の穴から鼓膜までの通り道(外耳道)に炎症が起きる病気です。初期段階では軽い痒みで済みますが、「慢性」化すると耳の構造そのものが変化し、治りにくい体質へと変わってしまいます。
頭を頻繁に振る: 耳の中に違和感や痛みがある際に見られる、最も代表的なサインです。
耳を後ろ足で掻く: 爪で耳の付け根を激しく掻いたり、床に耳を擦り付けたりします。
耳垢(みみあか)の変化: 茶色いベタベタした耳垢、あるいは黄色くドロッとした膿のような耳垢が増えます。
独特な臭い: ツーンとする酸っぱい臭いや、脂っこい臭いが漂います。
耳の赤みと腫れ: 耳の穴の入り口が赤く腫れ、通り道が狭くなっているように見えます。
慢性外耳炎の恐ろしいところは、炎症が繰り返されることで耳の皮膚が厚くなってしまう(肥厚)ことです。
耳の穴が狭くなる: 皮膚が象の肌のようにゴツゴツと厚くなり、通気性がさらに悪化します。
耳が硬くなる(石灰化): 長期間の炎症により、本来柔らかい軟骨が骨のように硬くなり、外科手術が必要になることもあります。
耳を触ると怒る(痛み): 痒みが「痛み」に変わり、頭を触られるのを極端に嫌がるようになります。
外耳炎といえば「夏の湿気」が原因と思われがちですが、冬特有の環境要因も慢性化を助長します。
暖房の効いた室内は、私たちが想像する以上に乾燥しています。 耳の中の皮膚も全身の皮膚の一部です。乾燥によって皮膚のバリア機能が低下すると、外部からの刺激に敏感になり、わずかな細菌の増殖でも強い炎症を起こしやすくなります。
暖かい室内で過ごすと、耳の中の温度も上昇します。一方で飲水量が減りがちな冬は、耳の中の自浄作用(汚れを外に押し出す力)が低下し、熱と皮脂がこもることで、マラセチア(カビの一種)や細菌が繁殖しやすい絶好のコンディションが整ってしまいます。
慢性外耳炎の約8割には、背景に食物アレルギーや犬アトピー性皮膚炎があると言われています。冬場はハウスダスト(ダニの死骸やフン)が舞いやすい季節です。これらが耳の入り口に付着することで、冬の間も休むことなく炎症の火種が燃え続けているのです。
耳が垂れている犬種(コッカー・スパニエル、レトリーバー、トイ・プードルなど)や、耳の中に毛が密集している犬種は、もともと通気性が悪いため、一度慢性化すると非常に治りにくい傾向にあります。
慢性外耳炎を抱える子にとって、自宅での過度なケアは逆効果になることがあります。まずは「環境」を整えることから始めましょう。
室内を乾燥させすぎないよう、加湿器を活用して湿度50〜60%を維持してください。皮膚のバリア機能を保つことが、結果として耳の健康に繋がります。
良かれと思って綿棒で耳の奥を掃除するのは、絶対にやめてください。
綿棒で汚れを奥に押し込んでしまう。
炎症でデリケートになった皮膚を傷つけ、さらに腫れを悪化させる。
自浄作用を阻害する。 耳のケアは、「見える範囲の汚れを、清潔なコットンやガーゼで優しく拭き取る」程度にとどめるのが鉄則です。
水分不足は全身の代謝を下げ、耳の分泌物の粘度を上げます。新鮮な水をいつでも飲めるようにし、ぬるま湯を与えるなどして冬の飲水量を確保しましょう。
もしアレルギーが疑われる場合は、獣医師と相談の上、おやつを含めた食事の管理を徹底してください。冬に美味しい「人間のお裾分け」が、耳の痒みを再燃させているかもしれません。
外耳炎は「放置して治ることはまずない」病気です。特に以下のような場合は、お家での様子見を切り上げて、すぐに受診してください。
片方の耳だけをずっと気にしている: 耳の中に異物が入っていたり、深刻な腫瘍が隠れていたりすることがあります。
耳の穴が塞がっている: 皮膚の腫れで奥が見えない状態は、市販の洗浄液などは届きません。
平衡感覚がおかしい(斜頸): 頭が片側に傾いたままだったり、ふらついたりする場合、炎症が耳の奥(中耳・内耳)まで達している可能性があります。
耳を触ると「グチュグチュ」と音がする: 耳の中に大量の液体(膿や分泌物)が溜まっています。
当院では、単にお薬(点耳薬)を出すだけでなく、慢性化の原因を根本から解決するための「耳科・皮膚科専門」のアプローチを行っています。
慢性外耳炎の治療における「革命」とも言えるのが、ビデオオトスコープです。
可視化: 鼓膜の状態や耳の奥の汚れを、カメラで詳細に確認します。
精密洗浄: 盲目的に薬を入れるのではなく、カメラで見ながら、溜まった耳垢や「バイオフィルム(細菌のバリア)」をピンポイントで徹底的に洗浄・除去します。
処置: 小さなポリープがあれば、その場で切除することも可能です。
何度も再発するケースでは、その耳にいる菌がどのお薬に耐性を持っているかを調べます。適切な抗生剤を選ぶことで、無駄な投薬を減らし、早期改善を目指します。
耳の皮膚を強くするためのスキンケア(保湿やサプリメント)や、背景にあるアトピー・アレルギーに対する内服薬の調整を行います。
耳の穴が完全に塞がってしまったり、石灰化が激しかったりする場合、耳の通り道を作り直す手術(全耳道切除術など)を検討することもあります。こうなる前に、早期に内科的治療で食い止めることが何より大切です。
耳のトラブルは、一度慢性化のサイクルに入ってしまうと、動物たちにとって一生涯のストレスとなり、飼い主様にとっても終わりの見えない不安に繋がります。
暖房の乾燥や冬の寒暖差は、耳のバリア機能を揺さぶります。
しかし、裏を返せば、「湿度が低い冬こそ、耳の中をリセットして土台を整える最大のチャンス」でもあるのです。
「毎年、春になると耳が真っ赤になる」
「ずっと点耳薬を続けているけれど、なかなか良くならない」
そんな悩みをお持ちの方は、春の陽気が来る前に一度、耳の徹底的なクリーニングと精査をしてみませんか? 耳がスッキリすれば、ワンちゃん・ネコちゃんの表情も、春の日差しのように明るくなるはずです。
当院ではビデオオトスコープを用いた精密な耳科検診を行っております。外側からでは見えない「慢性化の真犯人」を一緒に探し出し、この冬のうちに耳の悩みに終止符を打ちましょう。お気軽にお問い合わせください。
愛知県知立市の動物病院 なんよう動物病院
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