犬の椎間板ヘルニアの症状と原因、治療について

  • 2022年11月16日
  • 最終更新日 2023年4月21日
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知立市、刈谷市、安城市、豊田市、名古屋市のみなさんこんにちは。

愛知県知立市のなんよう動物病院の院長の鈴木です。

今回は、犬の椎間板ヘルニアの症状と原因、当院での治療について説明をさせていただきます。

<椎間板ヘルニアとは>

背骨同士の間のクッションとなっている椎間板物質が正常な位置から逸脱し、脊髄を圧迫する事で痛みや麻痺などの症状が出る病気です。

<椎間板ヘルニアの症状>

・首や腰の痛み

・元気、食欲がない

・背中を丸くしている

・段差の昇り降りをしなくなった

・歩行の様子の異常

・自力での排尿、排便ができない

などがあります。

<椎間板ヘルニアの原因>

椎間板ヘルニアは大きく分けて、2種類に分けられます。

  • ハンセンI型

椎間板物質のことを髄核といいます。ジャンプなどで椎間板に対する圧力がかかった時に髄核が飛び出してしまい、神経を圧迫して症状を引き起こす椎間板ヘルニアを「ハンセンI型椎間板ヘルニア」と言います。このタイプの椎間板ヘルニアは急に症状が出てくることが特徴です。

直接的な原因は上記のように椎間板に対する圧力ですが、より髄核が飛び出しやすくなる「髄核の軟骨様変性」を起こしやすい犬種がいます。国内では、ミニチュアダックスフンド、ビーグル、シーズー、ペキニーズなどが挙げられます。その中でもミニチュアダックスフンドは圧倒的にナンバーワンの多さです。

  • ハンセンⅡ型

ハンセンⅡ型は髄核の線維質変性によりゆっくりと進行していきます。ハンセンI型の様になりやすい犬種というものはなく、高齢の動物であればどんな子であっても発症する可能性があります。

 

<椎間板ヘルニアのグレード分類>

頸部の椎間板ヘルニアはグレード1〜3、胸腰部の椎間板ヘルニアはグレード1〜5に分類されます。

それぞれの分類と症状は以下の通りです。

頸部椎間板ヘルニア

グレード1:首の痛みのみ

グレード2:立つことはできるが、四肢に麻痺が見られる

グレード3:自力で立つことができず、寝たきりになっている

胸腰部椎間板ヘルニア

グレード1:背中の痛みのみ

グレード2:後ろ脚に不全麻痺が見られる。立つことはできる。

グレード3:後ろ脚に不全麻痺が見られる。立つことができない。

グレード4:後ろ脚の完全麻痺が見られる。

グレード5:後ろ脚の完全麻痺+痛覚の消失が見られる。

<知立市のなんよう動物病院での治療法>

椎間板ヘルニアの治療は大きく分けて、内科治療と外科治療があります。

頸部椎間板ヘルニアと胸腰部椎間板ヘルニアでは、グレード別で治療方針をご提案しています。

頸部椎間板ヘルニア

グレード1⇨内科治療

グレード2、3⇨外科治療

胸腰部椎間板ヘルニア

グレード1、2⇨内科治療

グレード3以上⇨外科治療

外科治療(手術)はレントゲンだけでなく、CTやMRIを用いて確実に椎間板ヘルニアと診断した後に実施すべきです。そのため、当院では上記の検査ができる施設をご紹介した上で手術を実施していただいています。

内科治療の最も大事なポイントは脱失した椎間板物質がそれ以上脊髄を障害しないようにすることです。そのため、ケージレスト(安静)が指示することが多いです。ケージレストは4〜6週間ほど必要と言われています。それは椎間板周囲組織が修復するまでに4〜6週間かかるとされているためです。「ケージレスト=散歩に行かないこと」と思っている飼い主様が多いですが、これは間違いです。正しいケージレストとは「ケージ内もしくはサークル内で管理する」ということです。ただし、ケージレスト期間中も1日に数回はケージから出して、症状の悪化がないかを確認する必要があります。

また痛み止めや抗炎症薬を用いて、逸脱した椎間板物質周囲の炎症を抑制するとともに動物の苦痛を和らげてあげる必要があります。注意点としてお薬を使うことによって痛みがなくなり、元気になって動き回ってしまう子が一定数います。そのため、調子が良くなってもあくまで「投薬のおかげ」と考えていただき、途中でケージレストを中止しないようにしてください。

<椎間板ヘルニアの予防>

犬種などによる遺伝的な要因は予防することはできませんが、ここではお家でもできる予防法を紹介します。

  • 肥満を避ける

私たち人間と異なり、四肢で歩く犬では体重の負荷が背骨にかなりかかってきます。当然、ジャンプや段差を昇り降りした時の衝撃も加わりやすくなり、その衝撃は体重が重い方がより大きくなります。不妊手術後に太ってしまった子はダイエットフードなどで体重管理を行いましょう。動物たちの肥満は特殊な病気を除いて、100%飼い主さんの管理不足によるものです。気をつけていただきたいです。

  • フローリングを避ける

フローリングに滑りやすい場所では特に注意が必要です。滑って転んだ時にも背骨には衝撃が加わります。生活環境の中でフローリングがあればカーペットなどを引いてあげてください。

  • 爪と肉球、足裏の毛のケアを行う

頻繁にお散歩に行く子であれば、散歩の中で自然に爪が削れていくこともありますが、室内メインの生活を送っている子ではそうはいきません。爪が伸びすぎるとしっかりと踏ん張れなくなり、滑りやすくなります。また肉球の間の毛が伸びすぎてしまうと肉球を覆い隠してしまい、滑りやすくなります。肉球が乾燥していても滑ってしまうので、尿素が配合されたクリームで保湿をしてあげると良いでしょう。

 

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