【皮膚科】フレンチブルドッグの食物アレルギー

  • 2019年11月1日
  • 最終更新日 2024年1月26日
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犬と猫の痒みや脱毛などで一般的な治療で改善しない難治性の症例の診断・治療に力を入れている愛知県のなんよう動物病院です。

当院は愛知県のほぼ中央、知立市にありますが刈谷市、安城市、豊田市、岡崎市など近隣の市町村だけでなく、名古屋市、日進市、半田市、大府市、東海市、蒲郡市、豊橋市など県内の各地から多くの患者様にご来院いただいています。

当院では皮膚科に特化した診療を行っています。診療をご検討されている飼い主様は以下のサイトをご覧ください。

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最近、当院にご相談いただく皮膚病の子に多い共通点として「アポキルを飲ませているけどよくならない」ということが挙げられます。アポキルは犬アトピー性皮膚炎に対する分子標的薬(痒みに関する神経の受容体のみをブロックしてくれるお薬)であり、犬アトピー性皮膚炎とちゃんと診断された子に使用するとかなりの確率で痒みをコントロールすることができます。しかしながら、診断アプローチが中途半端だとお薬を飲んでいるのに全く痒みが治らない!という事態にもなりかねません。

今回はそんな症例のご紹介です。

【症例】

フレンチブルドッグ、4歳7ヶ月、去勢雄

【症状】

今年の4月頃から急に皮膚の痒みが出てきて、全身に脱毛が拡がってきたとのこと。初診日にはかなりの痒みがあったようで、診察室でもボリボリと体を掻いていました。

顔や手が赤く腫れ上がっていますね。かなり痒そうです。

【診断】

痒みを引き起こす皮膚疾患には様々なものがあります。

感染(細菌、真菌)、外部寄生虫(ノミ、ダニ)、アレルギー、角化症、免疫異常、腫瘍、身体的・精神的要因によるものなどです。

これらの中でも病気によって起きやすい犬種や年齢がある程度予想されています。

本症例から4歳からの発症ということで、感染、アレルギーの他、内分泌失調による痒みなども選択肢に入れ、診断を進めることにしました。

また、フレンチブルドッグに好発する皮膚疾患も知られています。食物アレルギー、犬アトピー性皮膚炎、細菌性毛包炎、趾間皮膚炎、鄒壁皮膚炎などです。

今回の症例で注意しなければならないことは顔や手足の症状と後肢外側に出ている症状の原因はおそらく別物であるという点です。顔や手足の皮疹はアレルギー性皮膚疾患を強く連想させますが、後肢の皮疹は虫食い状に広がっています。これは細菌やカビなどで多くみられる皮疹であり、全てをひっくるめて考えてはいけません。実際にこの子は脱毛部から細菌の感染が確認できました。

次にアレルギーの診断に入りますので、食物アレルギーを診断するために食べているものを変えることが必要となります。除去食試験と言います。

ここで大事なのは、今まで食べたことのない成分で作られているフードを選ばないといけないという点です。そのためにはフードだけでなく、おやつやフィラリアなどの予防薬、お家の人がこっそりあげているものまで全て把握する必要があります。

食べている食品が把握できたところで2ヶ月間食べてもらうフードを選んでいきます。また、フードを変更するだけでなく使う食器も替えていただくことをお勧めしています。洗剤で洗っただけでは以前に食べていたフードの成分を完全に落としきれていない可能性があるからです。

よく他院で行われたアレルギー検査の結果を持っていらっしゃる飼い主様が見えますが、この検査で注意しなければならない点があります。それは検査結果がそのまま確定診断にはならないということです。陽性の判定が出ていても実際にその食べ物が症状を起こしているかはわかりませんし、陰性のものでも食べると症状が出ることがあります。また、検査のリストに載っていない食品に対してアレルギーを持っている可能性もあるため、全てがわかる検査ではないんです。ですから、私はこの検査を積極的にお勧めすることはありません。(検査費用がすっごく高いんです・・・)

ただし、食物アレルギーが除外しアトピー性皮膚炎の疑いが強まった時点で、環境抗原に対するアレルギー検査を実施することはあります。アトピー性皮膚炎は「環境アレルゲンに反応した痒みを引き起こす」病気ですので、原因を特定することができればい治療の選択肢を増やすことができる可能性があるからです。

アレルギー性皮膚疾患を疑う場合は、以上のように順序立てて検査を行っていく必要があります。

【治療】

皮膚科検査において細菌の感染が見つかったため、まずは抗生剤とシャンプーを用いて感染のコントロールからスタートしました。感染が見られなくなった時点でも痒みがかなり残っていたため、痒みに関しては他の疾患からくるものであると推測しました。

ここで除去食試験の登場です。これまで食べてこなかったタンパク源で作られているフードに変更し、2ヶ月間のトライアルを行いました。また、本症例は痒みが非常に強かったため、フードの変更に加えてステロイドの内服による痒みのコントロールも行いました。当院来院前に飲んでいたアポキルよりもステロイドの方が食物アレルギーに対してはキレがいいと感じています。当然、ステロイドを漫然と使うわけではなく計画的に量を減らしていき、負担がないレベルで継続することもあります。

下の写真がフード変更後、2ヶ月経過した時点の写真です。

右の写真を撮った時点では、内服薬は完全に休薬していますので、フードのみでここまでコントロールができているということですね!

ここまで綺麗になる子は多くはありませんが、食べているものを変えるだけでも痒みのない生活を送れるようになる可能性はあります。ただし、フードを変える時は必ず獣医さんに相談してください。その子が持っている基礎疾患のためにどうしてもフードを変えられない子もいますし、ちゃんと効果がありそうかどうかを判断するのは獣医さんに任せた方が無難です。

ということで今回ご紹介した子の最終診断名は

「細菌性毛包炎+食物アレルギー」

でした!

 

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