皮膚が黒くなる皮膚病の原因と治療について

  • 2023年5月7日
  • 最終更新日 2024年1月23日
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犬と猫の皮膚病診療に力を入れているなんよう動物病院の鈴木です!

当院は愛知県のほぼ中央、知立市にありますが刈谷市、安城市、豊田市、岡崎市など近隣の市町村だけでなく、名古屋市、日進市、半田市、大府市、東海市、蒲郡市、豊橋市など県内の各地から多くの患者様にご来院いただいています。

当院では皮膚科に特化した診療を行っています。診療をご検討されている飼い主様は以下のサイトをご覧ください。

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今回は皮膚が黒くなったときに考えられる原因と治療について、解説していきます。よくある皮膚病から珍しい皮膚病、痒みを伴うものと伴わないものなど様々な種類の皮膚病がありますので、ぜひ参考にしてみてください!

 

皮膚が黒くなっているのはどういう状態?

皮膚の中にメラニンと言われる色素が大量に生成され、皮膚の一部に沈着することで外から見ると皮膚が黒く見えるようになります。この状態のことを「色素沈着」と言います。また皮膚自体が黒くなっているわけではなく、毛穴に角質や皮脂腺からの分泌物が溜まることで黒く見えることがあります。この状態のことを「面皰(めんぽう)」と言います。

色素沈着を起こす皮膚病として、代表的なものは以下の通りです。

・皮膚の炎症後変化(感染症、アレルギー、脂漏性皮膚炎など)

・内分泌疾患

・腫瘍性疾患

・脱毛症に付随するもの

また、面皰を形成する皮膚病として、代表的なものは以下の通りです。

・感染症(犬ニキビダニ症、皮膚糸状菌症)

・内分泌疾患

今回はこれらの皮膚病を中心に皮膚が黒くなる皮膚病について、ご説明していきます!

 

皮膚が黒くなる(色素沈着を起こす、面皰を形成する)皮膚病の紹介

 

1、感染症

表在性膿皮症

表在性膿皮症は、主にブドウ球菌による皮膚の細菌感染症です。表在性膿皮症ではまず「丘疹」という赤いブツブツが皮膚にできます。その後、菌が増殖すると「膿疱」というニキビのような見た目に変化します。さらに膿皮症が進行すると膿疱が破れて辺縁のみが残り、「表皮小環」と呼ばれる状態になります。表皮小環の中心部では、炎症がおさまり皮膚の色が黒く変色していることがあります。この部分が色素沈着です。

診断には「膿疱」や「表皮小環」からサンプルを採取し、菌が増殖していることを顕微鏡で確認する必要があります。

治療は抗生剤の内服や塗り薬、シャンプーによる皮膚のスキンケアなどが有効です。

脂漏性皮膚炎(マラセチア皮膚炎)

皮脂の分泌が多すぎることで皮膚に炎症を起こし、皮脂を餌にするマラセチアが過剰に増殖することで炎症が悪化していく皮膚病です。初期の段階では皮膚は赤みがあるだけですが、慢性化すると皮膚が黒くなり象のようなゴワゴワした分厚い皮膚に変化していきます。

脂漏性皮膚炎の診断は見た目のベタつきや発症時期なども重要ですが、皮膚科検査で皮膚のターンオーバーが短くなっていることを確認することが大切です。犬の皮膚は通常3週間ほどで新しい細胞に置き換わりますが、脂漏性皮膚炎の場合はそのサイクルが短くなり若い皮膚の細胞が表面に出てくることで剥がれやすくなります。この剥がれた皮膚の細胞がフケとなります。

 

脂漏性皮膚炎の治療のメインはスキンケアです。シャンプーやクレンジングを使って余分な皮脂を落とし、サプリメントやスポット剤を使って綺麗な皮脂を補ってあげることが重要です。また、皮膚の炎症や痒みが強い場合には、ステロイドや免疫抑制剤を用いて効率的に皮膚の炎症を抑え込むことで、短期間で改善に持っていくことも可能です。

膿皮症やマラセチア皮膚炎はシャンプーによるスキンケアが非常に効果的な皮膚病です。当院が推奨するシャンプーの方法をyoutubeでもご覧いただけます。

 

この動画で紹介しているシャンプーはこちらからご覧ください。

 

当院でシャンプー時にマイクロファイバータオルを使用しています。

拭き上げの際に吸水力のあるタオルを使うとドライヤーの時間を短縮することができ、わんちゃんのストレスも減るうえ、皮膚の加温ダメージも少なくすることができます。

 

皮膚糸状菌症

皮膚糸状菌は犬や猫のほか、人にも感染する人獣共通感染症です。感染は保菌動物との接触や土壌、家や飼育小屋などの菌に汚染された被毛や埃などからの接触で成立します。皮膚に侵入した皮膚糸状菌に反応して、感染部では炎症が起こります。炎症が慢性化すると皮疹ができている部分の中心から皮膚が黒く変化していきます。また毛包内で皮膚糸状菌が感染している場合は、毛穴だけが黒く浮き出るように見えることがあります。

診断にはウッド灯という特定波長の紫外線を出す機械を使って、菌が付着している被毛を光らせる手法が用いられます。その上で光っている毛を顕微鏡で確認し、培養検査を行うことで皮膚糸状菌症を診断します。ただし、糸状菌の中にはウッド灯で光らないものもいるため、注意が必要です。

治療は内服薬が基本となりますが、皮膚糸状菌の治療に使用される抗真菌薬は肝臓に負荷をかけることがあるため、使用前と使用中の肝酵素値のモニタリングが必要です。感染部位が一部分に限局している場合は塗り薬のみで完治することもあります。また、糸状菌は主に毛に感染しますので、感染している被毛とその周囲の毛を含めて、毛を刈ってしまうのも感染拡大を防ぐのに有効です。

犬ニキビダニ症(毛包虫症)

ニキビダニは哺乳動物の皮膚に常在すると言われ、ほぼ100%の動物が寄生を受けていると言われています。ニキビダニは主に毛穴の中に寄生するため、毛穴を中心とする皮膚の変化がよくみられます。脱毛や皮膚が黒くなった変化が毛穴に一致してみられる場合、ニキビダニの可能性が高くなります。ニキビダニの増殖に加え二次的な細菌感染や毛包炎を起こすと、皮膚には膿疱が形成されます。体は毛穴の中にいるニキビダニを排出しようとするため、毛穴の中の角質が大量に出てくることがあります。そうすると毛穴は拡張し、普段よりも毛穴の汚れが目立ち、黒く見えることがあります。

ニキビダニ症の診断は毛を抜いたり(毛検査)、皮膚を擦ったりして(皮膚搔爬検査)ニキビダニが過剰に増殖していることを確認する必要があります。症例の中にはこれらの検査を実施してもニキビダニが検出できないこともあります。その場合はニキビダニ症の典型的な皮膚症状が出ている場所から皮膚を採材して検査をしなければいけません。

治療は毛包洗浄効果のあるシャンプーを使用して毛穴のクレンジングを行うと効果的です。また近年ではノミダニ駆虫薬にニキビダニに対する高い殺虫効果があることがわかってきており、普段使用する予防薬を用いて治療を行うことが可能となっています。

 

2、アレルギー性皮膚炎

犬で問題となりやすいアレルギー性皮膚炎には、食物アレルギー、犬アトピー性皮膚炎があります。

食物アレルギー

食物アレルギーは、普段食べているものが原因で発症するアレルギーです。一般的に1歳未満で発症することが多いと言われています。タンパク質に反応して、痒みを引き起こすことが知られていますが、ドライフードの場合フードを揚げる時に使用される油でもアレルギー反応を起こす可能性があります。

食物アレルギーは非常に強い痒みを引き起こすことが特徴的で下の写真のように皮膚が黒いだけではなく、赤みも帯びていることがあります。

診断にはこれまで食べていたフードを変更する「除去食試験」が必要になります。基本的にはこれまで口にしたことのない材料で作られているフードを選ぶことになりますが、市販のプレミアムフードなどを食べている子はあらゆる食材がフードに使用されているため、食べたことのない材料のフードを選ぶのは非常に困難です。その場合は分子量を小さく分解した低タンパク食やアミノ酸食への変更、食べてもアレルギーが出る可能性が低い食材を調べる血液検査を行うことになります。除去食試験の期間中は、できる限り口にするものは指定されたフードのみにする必要があります。当然、フィラリアなどの予防薬も試験期間中は皮膚に直接つけることができるスポットタイプに変更するべきでしょう。ただし、おやつなどは使用しているフードと同じ原材料で作られたものであれば、食べてもOKな場合もあります。

犬アトピー性皮膚炎

犬アトピー性皮膚炎は環境アレルゲンや食物アレルゲンに対するIgE抗体の増加を伴う炎症と痒みを主体とするアレルギー性皮膚疾患とされています。犬アトピー性皮膚炎には好発犬種があり、国内では柴犬やシー・ズー、フレンチブルドッグ、ラブラドールレトリバー、ウェストハイランドホワイトテリアなどでよく見られます。犬アトピー性皮膚炎の症例は、外部から皮膚の内側を守る皮膚バリア機能が低下していると言われています。これにより微細なアレルゲンがより皮膚の中へ侵入しやすくなっており、アレルギー反応を起こしやすい状態となっています。

症状が出たばかりの急性期では、軽い痒みと赤み、ぶつぶつなどの皮疹が主体となります。一方、症状が慢性化すると色素沈着や苔癬化といった皮膚の二次変化を起こすようになります。

犬アトピー性皮膚炎の治療には内服薬が汎用されています。弱った皮膚バリアを補修するためにサプリメントやフードでの栄養補給、適切なシャンプーや保湿剤の使用といったスキンケアを投薬と並行して行うことが再発予防には必要となります。

こちらのページではより詳しく犬アトピー性皮膚炎について解説しています!ぜひご覧ください!

 

3、内分泌疾患

甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症は甲状腺もしくは脳になんらかの異常があり、甲状腺ホルモンの血中濃度が低下することで起こる疾患です。鼻筋や横腹、陰部周囲、尾部などに脱毛や色素沈着、ふけ、ベタつきといった皮膚症状が見られることがあります。さらに皮膚バリア機能の低下により、膿皮症やマラセチア皮膚炎、ニキビダニ症などの二次的な感染症を併発していることが多いです。また皮膚症状以外の全身症状として、体重増加、元気がない、食欲低下、高脂血症などが見られることがあります。

診断には血液検査で甲状腺ホルモンが実際に減少していることを測定するとともに、エコー検査で甲状腺に変化があることを確認するとより確実でしょう。

治療は甲状腺ホルモン剤を投薬し、血中のホルモン濃度を上昇させます。体重や食欲などは投薬を開始して1ヶ月以内で変化が見られることが多いですが、皮膚症状は投薬から3〜6ヶ月ほどして変化することがあるため、時間をかけて経過を観察していく必要があります。

クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)

クッシング症候群は体内のステロイドが過剰となり発症する疾患です。副腎から分泌されるステロイドが関与する自然発生型と、外から投与されるステロイド(内服薬や塗り薬など)が関与する医原性型があり、自然発生型は稀で医原性型の方が多いとされています。

クッシング症候群の皮膚症状には、対称性の脱毛、面皰、皮膚の菲薄化、石灰沈着などがあります。またクッシング症候群は全身症状の方が目立つことがあり、多飲多尿、食欲増加、パンティング、腹囲膨満などが見られます。

診断には血液検査でのホルモン測定と、エコー検査で副腎のサイズを確認することが必要となります。

治療は医原性クッシングであれば、ステロイドを休薬することで症状は改善していくでしょう。自然発生型のクッシングの場合は、内服治療によるステロイドホルモンの合成抑制が主流です。投薬開始から皮膚症状に改善が見られるようになるには、平均で3〜6ヶ月ほどかかります。

性ホルモン失調症

性ホルモン失調は未去勢・未避妊の犬猫で発生する疾患です。オスでは、睾丸腫瘍による男性ホルモンの過剰分泌、メスでは卵巣の機能異常による女性ホルモンの過剰分泌が原因となります。

首、太もも、耳、腰、腹部、会陰部などに脱毛、面皰、色素沈着が見られることがあります。また皮膚以外の症状として性ホルモンの過剰分泌からくる発情周期の乱れや消失、乳頭の腫大、睾丸や前立腺の腫大などが見られます。

治療は避妊・去勢手術を行うことです。治療効果は3〜6ヶ月ほど時間をおいてから判定します。

 

4、脱毛症

毛周期停止

毛周期停止はトイプードルやポメラニアン、シベリアンハスキーなどでよく見られる痒みを伴わない脱毛症です。脱毛は太ももの裏側、尾部、首などから始まり、徐々に頭部と手足を除くほぼ全身に拡大します。脱毛の他に毛質が乾燥した柔軟性のないものに変化することもあります。皮膚はドライぎみで脱毛以外に黒く変化する色素沈着や面皰が見られます。診断は他の痒みのない皮膚疾患の除外です。血液検査や画像診断を行い他の疾患を鑑別していきます。また皮膚病理検査を行った部分や皮膚炎を起こした部位にのみ発毛を認めることがあり、これは他の内分泌疾患に関連した脱毛症では見られない現象です。

治療は未不妊の犬であれば避妊・去勢手術を行うことがあります。また内服薬やサプリメント、入浴やフードの変更と様々な治療法が試されていますが、まだ特効薬的な治療法は確立されていません。いろいろなパターンの治療法を試して、その子その子に合っているものを見つけていく必要があります。

 

パターン脱毛症

パターン脱毛症は一般的には生後半年〜1年ほどで発症する脱毛症ですが、歳を取ってから脱毛してくる例も稀にあります。小さい頃から脱毛している症例ではそもそも、飼い主さんが脱毛症と認識していないケースも多々あります。

パターン脱毛症の好発部位は耳、首、腹部、尾部です。最もよく見られる好発犬種はミニチュアダックスフンドで、そのほかにチワワ、ミニチュアピンシャー、イタリアングレーハウンド、ボストンテリアなどに発生すると言われています。

診断は被毛の形態検査と皮膚病理検査を合わせて行います。

治療法については毛周期停止同様確立していませんが、体内リズムを調整する薬で発毛が認められた報告があります。

 

5、腫瘍性疾患

悪性黒色腫(メラノーマ)

良性黒色腫(メラノサイトーマ)

メラノーマもメラノサイトーマも皮膚の中でメラニンを作る細胞であるメラノサイトが増殖し、腫瘍化した疾患です。どちらの腫瘍もメラニンを豊富に作るため、肉眼的には黒っぽくなります。

メラノサイトーマは体や頭部など広い範囲にできやすく、ポツンとした黒色のしこりとして見つかることが多いです。転移の頻度は低く、外科摘出で根治が見込めます。

メラノーマは悪性黒色腫の別名通り、非常に悪性度の高い腫瘍です。頭部や四肢、雄犬の包皮などにできやすい傾向があります。特に口腔内や口唇、爪の周囲などにできた場合はより悪性の挙動を示す場合があります。しこりの周囲に根を張るように浸潤することがあるため手術では広範囲に切除を行う必要があるほか、遠隔転移も起こす可能性があります。メラノーマが見つかった場合には、腫瘍の専門医を受診した方がいいでしょう。

 

皮膚病の治療なら、なんよう動物病院へ!

今回は皮膚に皮膚が黒くなっている時にどんな病気の可能性があるのか、またどのような治療法があるのかをまとめてみました。

「皮膚が黒くなっている」と言っても感染症やホルモン異常など一般的に診断される疾患からメラノーマのように全身に転移していくような悪性腫瘍まで候補に挙がります。

なぜ皮膚が黒く変化するのかのメカニズムがわかっていないと原因を絞り込むのは難しいので、いつもと違う様子があれば皮膚科を得意とする動物病院へ連れて行ってあげましょう!

当院では年間200症例以上の皮膚病に悩むワンちゃん、ねこちゃんのセカンドオピニオンでご来院いただいております。これらの豊富な経験から同じような見た目の皮膚病であっても、経過や痒みの程度、お薬に対する反応性などを総合的に判断してより的確な診断が下せています。当院では皮膚科初診時には1時間から1時間半ほどの診察予約を設け、問診〜身体検査〜臨床検査〜治療のご説明までをゆっくり時間をかけて行えるようにしています。

皮膚病の治療は他の疾患に比べ、症状の改善までに時間がかかることが多い診療科です。何年も治療がうまくいかずにくすぶっていた症状がすぐに良くなることは稀で、改善まで数ヶ月かかることもあります。初回の診察で十分な時間をかけてお話をお聞きし、身体検査と皮膚科検査などの各種検査を漏らさずに実施することで、適切な治療法を早期にご提案し改善までの期間を短くすることが可能となっています。

もしワンちゃん、猫ちゃんの皮膚のことで少しでも気になることがございましたら是非一度、お気軽にご相談ください!

 

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