痒くないのに毛が抜ける!犬のアロペシアXとはどんな病気?|なんよう動物病院

  • 2021年8月28日
  • 最終更新日 2024年4月01日
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わんちゃん、ねこちゃんの治療が困難な皮膚病の診療に力を入れているなんよう動物病院です。

当院は愛知県のほぼ中央、知立市にありますが刈谷市、安城市、豊田市、岡崎市など近隣の市町村だけでなく、名古屋市、日進市、半田市、大府市、東海市、蒲郡市、豊橋市など県内の各地から多くの患者様にご来院いただいています。

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今回は、多くの飼い主さんが頭を悩ませている犬の脱毛症の代表格アロペシアX・脱毛症」について、解説します。

 

アロペシアX・脱毛症Xってどんな皮膚病?

アロペシアXは犬に起こるかゆみのない脱毛症で、毛が生え変わるサイクルが止まってしまうことで発生します。現在のところ原因は不明とされていますが、特定の犬種に好発することから、遺伝的背景が関連した毛周期の異常であることが予想されています。これまでは特にポメラニアンに多くみられていたことから、「ポメハゲ」とか「ポメ脱」と呼ばれることもありました。世界的には、ポメラニアンやシベリアン・ハスキー、アラスカン・マラミュートといった北欧犬種(毛がもふもふの犬種ですね)に多いとされています。国内ではこれらの犬種の他に、トイ・プードルやパピヨンなどの小型犬種でも多く診断されています。

アロペシアXによって発生した脱毛は見た目の問題、すなわち美容上の問題であり、わんちゃんの健康状態には影響しないと考えられています。しかし、個人的には本来あるはずの被毛がなくなることで紫外線の暴露量が増加し、長い年月で見たときに皮膚になんらかのトラブルを起こす可能性もあるのではないかと考えています。

 

アロペシアXの症状

毛周期停止(アロペシアX)は2〜3歳の若齢犬での発症が多く、初期症状としては首周りや太ももの裏側から脱毛が始まるとされています。この脱毛は頭部や四肢を除くほぼ全身に拡大し、左右対称性に進行していきます。皮膚に色素沈着が認められる場合もあります。被毛がないことによるドライスキンや、皮膚バリア機能の低下による膿皮症の併発を認めることもあります。

 

アロペシアXになりやすいポメラニアンの特徴

アロペシアXの代表犬種であるポメラニアンの中でも発症しやすい子の特徴をご紹介します。

✅マズルが短いベビーフェイスで、タヌキ顔の子が多い

✅3kg以下の小柄な子で出やすい

✅2歳未満の若齢での発症が多い

✅食に無頓着

✅肝臓や胆嚢にトラブルを持っている子が多い

✅クリームや白といった色素が薄い子の方が重症化しやすく、再発率も高い

✅同じブリーダー内や兄弟での発症が多い

 

アロペシアXを発症すると起こる変化

次にアロペシアXが始まるとどのような変化が起きるのかについて解説します。

✅毛艶がなくなり、絡みやすいボソボソの毛質になる

✅皮膚が乾燥し、膿皮症を繰り返すことが多い

✅皮膚に色素が沈着することで黒っぽくなる

✅秋から冬にかけて悪化し、春先になると発毛することが多い

✅太もも、首、背中の脱毛から始まり、顔や足先の毛は最後まで残る

 

アロペシアXの診断方法と似た皮膚病の紹介

現在のところ、アロペシアXを直接診断できる方法はありません。アロペシアXと同じような「痒みのない脱毛」を示す皮膚病を検査によって除外する必要があります。ここではアロペシアXと同様に、首や太ももの裏側から脱毛の始まりやすい皮膚病をご紹介します。

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモン分泌量の低下により脱毛が起こる病気です。体幹部以外にも鼻筋や尾部にも脱毛を認めることがあるのが特徴的です。また甲状腺機能低下症になると脂質代謝にも異常を起こすことがあり、その場合は脂漏やフケを認めることがあります。皮膚症状以外にも運動量の低下、肥満、低体温など様々な症状が見られます。

副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

副腎皮質機能亢進症は、脳の下垂体もしくは副腎腫瘍により過剰なステロイドホルモンが分泌される病気です。体幹部の脱毛とともに、皮膚萎縮による血管の明瞭化、傷の治癒遅延、石灰沈着などが見られることがあります。また皮膚以外の症状として、多飲多尿、多食、過呼吸、腹囲膨満といった異常が見られます。

この病気で90%以上の症例で見られる症状が多飲多尿です。多飲の目安としては体重×100ml以上の水を飲んでいた場合、明らかに異常と判断して大丈夫です。

注意点として多飲多尿が症状として現れる疾患は他に肝臓疾患や腎臓疾患、ホルモン異常、糖尿病など様々ですから、多飲多尿=クッシング!と決めつけずに早めに病院を受診するようにしましょう。

性ホルモン失調症

去勢もしくは避妊手術を行なっていない高齢犬で見られる病気で、皮膚には体幹部の脱毛や脂漏が見られることがあります。

 

休止期脱毛

毛の生え変わりのサイクルが毛の抜けやすい「休止期」と言われる段階でストップしてしまい、脱毛につながる皮膚病です。原因として、発熱、薬物、麻酔、栄養不良、手術、出産など様々なものが報告されています。

 

以上の疾患を検査によって除外した後は、皮膚病理検査を行うことをお勧めしています。その理由としては、他の皮膚疾患の除外の他に毛周期停止では皮膚サンプルを採取した部分から発毛が認められることがあるためです。

 

アロペシアⅩの治療法のご紹介

現在当院では力を入れていれているアロペシアXの治療法は、以下の3つです。

✅ホルモン調整

✅皮膚の正常化

✅適切な皮膚への刺激

ホルモン調整

ホルモン調整は主にお薬を使って行います。体のリズムを整えるホルモンや足りない甲状腺ホルモンなどをうまく補給してあげることにより、発毛サイクルを動かすことができるようにします。ただし、ホルモンを調節するお薬は副作用があるものもあるため、状態の細かなチェックと定期的な血液検査をしたほうがいいでしょう。

皮膚の正常化・栄養補給

皮膚の正常化にはサプリメントを使用することが効果的です。発毛効果のあるサプリメントがいくつか報告されています。お薬と違い、副作用がほとんどないのがメリットです。

→2024年現在は、一般的に発毛効果が報告されているサプリメントだけでなく、各種ビタミンやミネラル、アミノ酸などを配合したものをお渡ししており、皮膚コンディションを改善させるための治療に力を入れています。

また皮膚の乾燥を防ぐために毎日の保湿や毎週の入浴もおすすめしています。

 

皮膚への刺激

適切な皮膚への刺激としては、当院ではお灸治療に積極的に取り組んでいます。ホルモン治療とサプリメントでの栄養治療に加えて、お灸を行うことでこれまで発毛がなかった症例でも良好な成績をおさめています。またご自宅でできる皮膚へのケアとして炭酸泉の入浴をおすすめしています。その他報告は多くありませんが、食事療法、酸素カプセル、レーザー照射、オゾン療法などの体質改善やスキンケアを行うことで発毛を認めることがあります。

 

マイクロニードル法

局所麻酔もしくは全身麻酔下で行う処置です。細かい針のついたローラーで皮膚を刺激することで細胞を活性化させ、発毛を促します。ポメラニアンでの処置では6週間以内に発毛が認められたとの報告があります。

下の写真は実際にマイクロニードルで治療した症例です。

まとめ

今回は痒みのない脱毛症の代表である「アロペシアX」について、解説しました。最近、セカンドオピニオン、サードオピニオンでご来院されるわんちゃんでよく見るのは1種類の内服薬やサプリメントを数ヶ月おきに変わるがわる使っているパターンです。毛周期停止は治療法だけでも選択肢が多くあり、どれがその子にとって効果を見せてくれるのかは使ってみないとなかなかわかりません。当院では複数の種類のお薬、栄養剤、サプリメントを低用量で配合することで効果を実感することが多いです。

一般的にアロペシアXの治療は、3ヶ月間同じ治療を継続し反応がなければ次の治療に切り替えることが推奨されていますが、季節によって発毛に差があるため、まずは半年ほど頑張って治療にトライしていただくことをおすすめしています。

 

犬猫の治らない皮膚病治療なら、なんよう動物病院へ!

当院では年間300例以上の皮膚病に悩むワンちゃん、ねこちゃんにご来院いただいております。これらの豊富な経験から同じような見た目の皮膚病であっても、経過や痒みの程度、お薬に対する反応性などを総合的に判断してより的確な診断が下せています。そのためには診察に入る前にお時間をいただき、しっかりと問診を行ってワンちゃん、ねこちゃん のこれまでの経過や状態をお聞きする必要があります。当院では初診時に限り、通常の診療時間ではない昼間の時間に「皮膚科特別診療枠」を設けており、1〜2時間かけてじっくりお話を伺うようにしています。

皮膚病の治療は他の疾患に比べ、時間がかかることが多い診療科です。特に症状がよくならないためにセカンドオピニオンを求めてご来院される場合は、治療期間が長期間におよびやすい傾向があります。初回の診察で十分な時間をかけてお話をお聞きし、身体検査と皮膚科検査などの各種検査を漏らさずに実施することで、適切な治療法を早期にご提案し改善までの期間を短くすることが可能となっています。

もしワンちゃん、猫ちゃんの皮膚のことで少しでも気になることがございましたら是非一度、お気軽にご相談ください!

 

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