犬の皮膚病でよくある4つの症状と治療方法について

  • 2020年11月25日
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愛知県知立市のなんよう動物病院の院長だよりをお届けします!当院では一般診療のほか、犬猫の皮膚病治療に力を入れています。

今回は【犬の皮膚病でよくある4つの症状と治療方法】についてわかりやすく解説していきますので、是非最後まで読んでみてください!

 

 

1.犬が皮膚病の時に考えられる4つの症状

①皮膚が赤い

犬の皮膚が赤くなるのは、大きく分けると2パターンあります。炎症により血管が拡張し皮膚の下を通る血液量が増える場合、もしくは血管の外に血液が漏れ出す出血の場合のいずれかです。

炎症を起こしていることが想定される時は、犬の皮膚で炎症を起こす原因を調べていく必要があります。主に感染、アレルギー、免疫異常、腫瘍関連などです。また、皮膚の下での出血を疑う場合には、皮膚の中で何が起こっているのかを調べるとともに、血液中の異常も検査で確認する必要があります。血液凝固障害といい、遺伝性の病気では血友病、他の病気の結果として発生するものでは播種性血管内凝固症候群などがあります。これらの血液自体に異常が出る病気や血管壁が脆くなってしまい、簡単に出血してしまう病気もあります。

②よく毛が抜ける(脱毛症)

犬の皮膚病での脱毛は、抜け方のパターンからある程度病気を予想することが可能です。脱毛が起こる原因は生まれつきのものや、後天的に起こった病気によるもの、感染症によるものなどがあります。また、痒みやストレスによって自分で掻いたり舐めたりした場合にも、毛が折れることによって毛が抜けたように見えることがあります。

左右対象性の脱毛や体の中央だけがきれいに抜けるような場合は体の内面からの影響を受けて生じた脱毛を考えるため、内分泌疾患や毛の成長周期の異常を疑います。体の一部だけに脱毛が見られたり、まばらに毛が抜ける場合には、体の外からの影響を受けて生じた脱毛、すなわち感染症や掻きこわしを考える必要があります。

③フケが出る

フケは皮膚の細胞が代謝の最後に剥がれ落ちる過程で見られます。皮膚の細胞は初め、皮膚の内側で若い細胞として誕生し、成熟するにしたがって皮膚の外側へ動いていきます。大人の皮膚の細胞へ成熟すると角化細胞となって皮膚の最外層に移動し、皮膚の外側からの様々な刺激から体を守る役割を担います。

この過程を皮膚のターンオーバーといい、犬では通常21日ほどでターンオーバーが1サイクルします。このターンオーバーが何らかの理由で短縮してしまい、十分に成熟する前の若い細胞が外に出てきてしまうため、剥がれやすく、フケとなって出てくるのです。この状態を「角化異常」といいます。

角化異常には先天的な体質によるものと、後天的な疾患による影響で出てくるものがあります。先天的な角化異常の中でもベタつきを特徴とするものを原発性脂漏症といい、国内ではシーズー、ラブラドール・レトリバー、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、アメリカン・コッカー・スパニエルなどがよく見られます。

④痒みがある

犬の皮膚の痒みは、非常に多くの病気で見られる症状です。感染症、アレルギー、角化異常、免疫異常、腫瘍など疑うべき疾患は多岐に渡ります。また、本当の痒みではなく「ストレスが原因となったイラだち」や「体の痛み」による舐めこわし、掻きこわしが痒みの行動として飼い主様の目にとまることもあります。我々獣医師は問診を取る中で、症状がいつから始まったか、どこから始まったか、どのような時にどこを痒がるか、などをお聞きして可能性のある病気を絞り込んでいます。

 

2.よく診断される5つの疾患について

①膿皮症

◆膿皮症とは

犬の膿皮症とは、皮膚の細菌感染症のことです。様々な菌が原因となりますが、多くの場合は皮膚に常在しているブドウ球菌が原因となります。人や猫も同じ「皮膚」をもつ生き物ですが、犬に比べると膿皮症の発生頻度は稀と言えます。それは犬の皮膚の特徴にあります。犬の皮膚の細胞が人の皮膚の細胞と比べると薄いこと、人に比べ分泌腺が発達していること、皮膚のpHが高い(アルカリ性に傾いている)ことなどが挙げられます。

また、膿皮症の原因としては、若齢犬であれば皮膚免疫が完成していないことや生まれつきの体質(アレルギー体質、多汗症、脂漏症など)が考えられ、高齢犬であれば内分泌異常や腫瘍、投薬の影響などが考えられます。またどの年齢でも発症原因となり得るのが、高温多湿の環境での生活や間違ったスキンケア(過剰なブラッシングなど)、粗悪なフードの給餌などです。膿皮症は大きく分けると以下の3つに分類されます。

・表面性膿皮症

表面性膿皮症はその名の通り、皮膚表面で細菌が過剰に増殖している状態です。この時、体の免疫反応として出てくる白血球は出てきません。そのため、感染は成立していないと考えられており、厳密には膿皮症の定義から外れるとされています。

・表在性膿皮症

表在性膿皮症は表皮や毛包内に細菌が侵入し、増殖することで発生します。若齢犬でよく見られる膿痂疹、腹部や背部に好発し皮膚の病変が円形に拡大していく表在性拡大性膿皮症、体や足の外側に好発し毛穴に一致した湿疹を形成する細菌性毛包炎があります。

・深在性膿皮症

深在性膿皮症は皮膚の深い部分で菌の感染が起こったときに発生します。はじめは顔面や体にしこりを認め、悪化すると穴が開いたり膿が出てくることもあります。

膿皮症についてのページもご覧ください!!

◆治療法

当院での膿皮症の治療は抗生剤による治療と抗菌シャンプーを使用したシャンプー療法に分かれます。

抗生剤を用いる場合、病変が体の広い範囲に拡大していれば内服薬を使用し、一部に限局していればぬり薬を使用するようにしています。内服の抗生剤には、使用していい推奨段階が示されており、いきなり強度の強い抗生剤を使用することはありません。まずは膿皮症の原因であるブドウ球菌に効くと言われているベーシックな抗生剤を使用し、その効果を見ます。この時点で効果がない場合や過去半年以内に抗生剤の使用歴があるワンちゃんに関しては、薬剤感受性試験を行います。この試験を行うことでどの薬が菌に効くかを調べることができます。

膿皮症における抗生剤の使用期間は3〜4週間と言われています。よく1〜2週間でやめてしまったという飼い主さんがいらっしゃいますが、それでは少し投薬期間が短く再発のリスクがあります。ぬり薬では直接皮膚に薬をつけることができるため、高濃度で薬剤を届かせることができます。

また、飲み薬の抗生剤と比べてぬり薬の消毒剤では薬剤耐性菌の出現する可能性が低く、長期間にわたって使用できるというメリットがあります。シャンプー療法では、抗菌シャンプーの他、オゾンバブルや高濃度炭酸泉浴を行うことで膿皮症の改善を期待することができます。

 

②マラセチア皮膚炎

◆マラセチア皮膚炎とは

マラセチアは動物の皮膚や耳などに常在している酵母様真菌(カビ)です。マラセチアは皮膚表面の皮脂を栄養源として増殖するため、ベタつきのある子では異常に増えてしまいます。マラセチアが増殖すると、マラセチアが分泌する酵素や代謝産物により皮膚炎が悪化します。皮膚炎の影響による変化として、皮膚の肥厚と色素沈着を認めるようになります。

通常、犬のマラセチア皮膚炎症例のほとんどがなんらかの皮膚のトラブルを持っており、皮脂の分泌過剰となりやすい環境を持っているため、マラセチアの増殖が起こりやすいと考えられています。マラセチア皮膚炎の基礎疾患となりやすいのは、犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、脂漏症、ニキビダニ症、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症などです。

マラセチア皮膚炎の好発犬種としてはウェスト・ハイランド・ホワイトテリア、シー・ズー、アメリカン・コッカー・スパニエル、チワワ、プードルなどが挙げられます。

◆治療法

マラセチア皮膚炎の治療は、のみ薬とシャンプー療法があります。のみ薬では抗真菌薬といってカビに対する薬を使います。

この薬が少し曲者で血液検査での肝臓の数値が上がってしまうことがあります。そのため、使用前と使用中は血液検査で肝臓の値をモニタリングする必要があります。

シャンプー療法では、マラセチアを直接殺菌するシャンプーが有効です。週2回、3週間のシャンプーを行うことでマラセチアの減少が認められたとの報告があります。また国内の報告では、クレンジングオイルを用いることでマラセチアに対するシャンプーと同等の効果が認められています。

マラセチアは皮脂の増殖が原因で増殖します。そのため当院ではマラセチア皮膚炎のワンちゃんに対して、マラセチア用のシャンプーを使用することはほとんどなく、クレンジングオイルや皮脂をコントロールするシャンプーを用いることで良好な結果を得ています。

 

③犬ニキビダニ症

◆犬ニキビダニ症とは

ニキビダニは通常、毛穴の中で生活しており皮膚症状のない健康な犬にも存在しています。ニキビダニ症はなんらかの原因でこのニキビダニが過剰に増殖し、皮膚に炎症を起こす病気です。

ニキビダニ症は体の一部にできる場合と全身に広がる場合があります。体の一部にできる場合は頭部や四肢に症状を認める場合が多く、若い犬で多く見られます。その原因としては、皮膚の免疫が十分に発達していないことや栄養状態が整っていないことなどが考えられています。また、全身に病変が広がる場合は、若い犬から高齢犬まで幅広く見られますが高齢犬の場合はホルモン異常や内臓腫瘍などの他の病気がないかを調べる必要があります。

◆治療法

犬ニキビダニ症の治療は、以前は注射薬や駆虫薬を用いて行うのが一般的でした。これらの治療薬でも高い治療効果は出ていたのですが、その中でもなかなか薬が効かず悪戦苦闘する症例がいました。

そんな中、数年前に出たイソオキサゾリン系のノミマダニ予防薬(よくCMでもやってます)が犬ニキビダニ症に対して非常に高い治療効果を持つことがわかってきました。

私がまだ勤務医をやっていた頃、どうしてもうまくコントロールができない犬ニキビダニ症のワンちゃんがいて、海外の文献でこの薬を見つけて藁にもすがる思いで使用したところ、劇的に状態が改善し飼い主様と一緒にすごく喜んだことを覚えています。

これらの予防薬の登場により、犬ニキビダニ症を見ることはほとんどなくなっていますが、まだ予防開始前の子犬や体力の衰えた老犬で見かけることがあります。

 

④食物アレルギー

食物アレルギーは「食べているものが原因で痒みが生じる皮膚病」です。食物アレルギーの痒みは他の痒みを生じる病気と比べると強いことが多く、夜も寝られないほど掻いている犬も見かけます。また、常に痒みの原因となるアレルゲンを摂食しているため、年中ずっと痒みが続くというのも特徴です。逆に同じ様な痒みを出す犬アトピー性皮膚炎やノミアレルギー性皮膚炎は、暖かい時期だけなどの季節性があることが一般的です。

食物アレルギーの痒みを持つ子は、同時に消化器のトラブルを抱えている子もいます。食物アレルギーを持つ犬の60%ほどで排便回数が1日3回以上だったとの報告もあります。

食物アレルギーの診断には、新しい食事を試す「除去食試験」と元のフードに戻す「食物負荷試験」を行う必要があります。新しいフードや食べ物の選択の方法は複数あり、これまで食べたことのないタンパク源で作られたフードや分子を細かく分解されたフードなどを選ぶことができます。ドッグフードがあまり好きではないという子には、ご自宅で食事を作っていただくこともできます。注意点として、最近よく処方されているフィラリアの予防薬などもタンパク成分が含まれているため、試験期間中は全て錠剤やスポット剤に変更する必要があります。

食事の変更で皮膚の痒みがおさまったとしても、それがゴールではありません。本当に今まで食べていたフードが原因だったのかを確認する必要があります。それが「食物負荷試験」です。

食物負荷試験では、新しいフードにもともと食べていたフードを少しずつ混ぜていき、痒みの悪化があるかを確認します。なぜわざわざ良くなったものを悪化させる必要があるかというと、「除去食試験」は通常8週間かけて行うため、その間の季節の変化や投薬により皮膚症状が改善した可能性もあります。そうなると食事の変更が良かったのか、その他の影響だったのかがわかりません。食事の影響が大きければ、食事をコントロールすることで薬を減らせるかもしれません。食事の影響がないとわかれば、薬を使う必要はありますが好きなフードを食べることができます。食物負荷試験は、皮膚病のワンちゃんのその後の生活を左右する大事な試験なんです。

◆治療法

食物アレルギーの治療はズバリ「痒みの原因となるタンパク源が含まれるフードや食品を口にしないこと」これに尽きます。

うまく痒みが出ないフードが見つかったら、基本的にはそのフードを食べていってもらうことになりますが、それだけでは飽きてしまうこともあるかと思います。当院ではそのような場合、「フードに使用されている原材料を同じものであれば与えても大丈夫ですよ。」とお伝えするようにしています。

例えば、鶏肉が使用されているフードであればササミを、魚介系のタンパクがメインで使用されているフードであればサーモンを加えていただくといった形です。こうすることでフードの飽きが来にくくなり、長期的に同じフードを使用することができるワンちゃんが多いと感じています。

食物アレルギーの症例ページもご覧ください!!

 

⑤犬アトピー性皮膚炎

犬アトピー性皮膚炎は一次診療施設において、よく診断される皮膚病です。犬アトピー性皮膚炎は犬種、発症年齢、発症部位、痒みの程度などである程度疾患を予測することが可能です。

犬アトピー性皮膚炎は遺伝的な体質や原因となるアレルゲンの種類、生活環境などの様々な因子が関係して皮膚症状が出てくるため、それぞれに対しての多角的な治療が必要となります。好発犬種は欧米ではウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、ラブラドール・レトリバー、フレンチ・ブルドッグ、ジャーマン・シェパード・ドッグなどが挙げられていますが、国内では柴犬やシー・ズー、トイプードルなどがよく見られます。この差は国の環境の違いもあるでしょうが、単純に飼育頭数が異なるためだと考えています。

 

犬アトピー性皮膚炎の初期は痒みから始まります。

  • 痒みによって体を掻く
  • 掻くことで皮膚のバリアが破壊される
  • バリアの破壊で、より多くのアレルゲンが皮膚に侵入するようになる
  • その結果として、より強いアレルギー反応が起きて痒みが増す

 

このようなサイクルで犬アトピー性皮膚炎はどんどん悪化していきます。より早期の①の段階で治療を開始することで悪化を防ぐことができます。

先ほど犬アトピー性皮膚炎はある程度予測が可能だと書きましたが、それだけで診断することはできません。診断のためには犬アトピー性皮膚炎と同じような「痒み」を示す皮膚病を一つずつ検査や治療で除外していく必要があります。当院では、細菌による膿皮症、マラセチアの増殖によるマラセチア皮膚炎、カビの増殖による皮膚糸状菌症、外部寄生虫であるダニが原因となる疥癬や犬ニキビダニ症、犬アトピー性皮膚炎に非常に似通った症状を示す食物アレルギーなどの皮膚病を問診や検査により除外した上で、「この子は犬アトピー性皮膚炎の可能性が非常に高い」と診断を下しています。

◆治療法

犬アトピー性皮膚炎の治療は多岐に渡ります。急性期、慢性期により推奨される治療法が異なり、内服薬、外用薬、注射薬、シャンプー、サプリメント、フードなど使用する治療は数多く存在します。それぞれの代表的な薬剤や治療法をご紹介します。

内服薬:ステロイド、シクロスポリン、オクラシチニブ

外用剤:ステロイド、タクロリムス

注射薬:イヌインターフェロン-γ、ロキべトマブ、減感作療法

シャンプー:極力低刺激のシャンプー、保湿剤(セラミド配合のもの)

サプリメント:必須脂肪酸含有サプリメント、乳酸菌配合サプリメント

フード:必須脂肪酸が多く含まれているフード

これらを全て説明することは割愛させていただきますが、これらの治療法をワンちゃんの状態に応じて組み合わせながら、最適な治療法にたどり着けるように考えています。

犬アトピー性皮膚炎の症例ページもご覧ください!!

 

3.皮膚病の治療なら、なんよう動物病院へ!

なんよう動物病院は地域のかかりつけ病院として知立市・刈谷市・安城市にお住いの飼い主様を中心にご来院いただいている動物病院です。

当院では年間100例以上の皮膚病に悩むワンちゃん、ねこちゃん にご来院いただいております。これらの経験の中で分かったことは、どの子も獣医師と十分に話す時間がなく、伝えたいことが伝えられていない現状があるということでした。そのため、当院では初診時に限り、通常の診療時間ではない昼間の時間に「皮膚科特別診療枠」を設けており、1〜2時間かけてじっくりお話を伺うようにしています。

十分な時間をかけて問診を行うことでこれまでの詳しい経過をお聞きすることができ、診断に結び付けられると考えています。また検査、ご説明にも時間をかけることができるため、初診の段階で今後の治療方針やどれくらいの時間がかかるかなどの細かなことまでお伝えすることが可能です。

皮膚病の治療は他の治療に比べ時間がかかります。また、皮膚病をきちんと改善させるためには、その子に合った治療をする必要があります。なんよう動物病院ではしっかり時間を取って問診、検査をすることで適切な治療提案を行い、これまでなかなか改善しなかった子の多くを改善させることができております。

当院の症例集ページはこちら!

もしワンちゃんのことで少しでも気になることがございましたら是非一度、お気軽にご相談ください!

院長の鈴木がお送りしました!

 

なんよう動物病院

愛知県知立市新池3−55

TEL : 0566−82−1121

 

 

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