犬のマラセチア皮膚炎の原因と対処法について

  • 2021年8月4日
  • 最終更新日 2024年4月01日
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愛知県知立市・刈谷市・安城市の皆さんこんにちは!なんよう動物病院の院長だよりをお届けします!当院では一般診療のほか、犬猫の皮膚病治療に力を入れています。

当院は愛知県のほぼ中央、知立市にありますが刈谷市、安城市、豊田市、岡崎市など近隣の市町村だけでなく、名古屋市、日進市、半田市、大府市、東海市、蒲郡市、豊橋市など県内の各地から多くの患者様にご来院いただいています。

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今回は【犬のマラセチア皮膚炎】についてわかりやすく解説していきますので、ぜひ最後までご覧ください!

マラセチア皮膚炎ってどんな病気?

マラセチア皮膚炎は、皮膚の上でマラセチアが過剰に増殖することで、ベタつきやフケ、臭い体臭、赤みが出る皮膚病です。高温多湿の季節に悪化する傾向があります。マラセチアは宿主特異性が高いため、犬同士でマラセチア皮膚炎が感染することはありません。また、人にもマラセチア症が知られていますが、常在するマラセチアの種類が異なるため、犬から人へ感染することもありません。

 

そもそもマラセチアってなに?

マラセチアは皮膚や耳に常在する酵母様真菌(カビの仲間です)であり、皮膚から分泌される皮脂をエサにして、生活しています。通常のマラセチアの量であれば皮膚や耳にトラブルを引き起こすことはありませんが、皮膚のコンディションが悪くなったり、皮脂の分泌量が増えると、これをきっかけにしてマラセチアが増殖します。この時、皮脂の増加に伴い、体臭もキツくなり臭いが強くなります。マラセチアが分泌する脂肪分解酵素や皮脂の分解によって生じた脂肪酸が皮膚に浸透し炎症を起こさせるため、マラセチアが増えたところでは皮膚が赤くなり痒みが出てきます。

マラセチア皮膚炎の症状とは?

マラセチア皮膚炎の初期症状は、皮膚の赤みやべたつきがメインです。まだこの頃は体の臭いはそこまでキツくないことが多いです。症状が慢性化してくると、皮膚が黒くなってくる「色素沈着」や生体がマラセチアからの刺激を少なくするために皮膚を分厚くしてゴワゴワしてくる「苔癬化」と呼ばれる状態になります。こうなってしまうと皮膚のべたつきも強く、フケが多く、体の臭いもかなり油っぽくなってきます。

マラセチア皮膚炎の好発部位は、耳介の内側、口唇、首、わき、指の間、爪の周囲、腹部、太ももの内側、陰部周囲などです。フレンチブルドッグやパグなどの顔にヒダが多い犬種では、ヒダの間の擦れるところにもマラセチア皮膚炎が好発します。

マラセチア皮膚炎が起こる原因はなに?好発犬種もご紹介!

マラセチア皮膚炎の原因であるマラセチアが増殖してしまう理由として、先天的な要因と後天的な要因があります。

まず、先天的な要因の代表は「本態性脂漏症」です。本態性脂漏症は、生まれつき皮脂の分泌が多い状態のわんちゃんがなりやすく、若齢から発症し、加齢とともに悪化する傾向があります。若齢では皮膚よりも再発を繰り返す外耳炎として始まることが多く、その後に体の各部位に症状が拡大していくことが多い印象です。本態性脂漏症は、アメリカン・コッカー・スパニエル、ウエスト・ハイランド・ホワイトテリア、ダックスフンド、バセットハウンド、ビーグル、シー・ズー、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、ラブラドール・レトリーバーなどが好発犬種として知られています。近年の日本では、トイプードルやチワワ、マルチーズ、柴犬、シェットランド・シープドッグ、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ジャーマン・シェパード・ドッグなどでも見られることが増えてきました。

次に後天的な要因です。後天的な要因はアレルギー性皮膚炎(犬アトピー性皮膚炎、食物アレルギー)、内分泌疾患(甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症など)、後天性の角化異常症などがあります。これらの後天的要因となる疾患の中で、犬アトピー性皮膚炎や食物アレルギーは皮膚の痒みを起こす疾患で、皮膚の病変が出る分布も非常に似ていることから、しっかりと鑑別をする必要があります。犬アトピー性皮膚炎と診断されてステロイドやアポキルが出されていても、全然かゆみがおさまらない!といった症例ではマラセチア皮膚炎が管理できていないことがよくあります。また、内分泌疾患や後天性角化異常症ではマラセチア皮膚炎の管理をすることで痒みの軽減が期待できますが、改善後の維持管理には原因となっている疾患の治療を併行して実施する必要があります。

 

マラセチア皮膚炎の検査と診断方法

マラセチア皮膚炎のための検査として、スライドグラスを直接皮膚に押し当てる押捺塗抹検査(スタンプ検査)とセロハンテープで皮膚表面の細胞を採取するテープ貼り付け試験(テープストリッピング)があります。どちらの検査においても、マラセチア皮膚炎の症状と合致する部分からの採材でマラセチアが1つでも検出された場合は、マラセチア皮膚炎を疑って治療を進めていくことになります。

一般的なマラセチア皮膚炎の治療

マラセチア皮膚炎の治療には、まずマラセチアの数を減らすことが最も重要です。治療は大きく分けると「全身療法」と「外用療法」に分けられます。

全身療法では主に抗真菌剤の内服で治療を行います。マラセチアに対する抗真菌剤は、長期間使用すると肝臓の数値が上昇することがありますので、使用前や使用期間中には肝臓の数値を血液検査でモニタリングする必要があります。

外用療法は、シャンプーと塗り薬の2種類があります。シャンプーでは2%クロルへキシジンとミコナゾールが配合されたシャンプーで週2回、3週間の洗浄を行うことで、マラセチア皮膚炎の改善が認められたとの報告があります。塗り薬は、全身に使っているとものすごい量が必要になってしまいますので、局所的にマラセチアが増殖しているところに適用する場合に効果的です。

「当院での」マラセチア皮膚炎の治療

マラセチア皮膚炎ではシャンプー療法が効果的であることが多いですが、上記のようなシャンプーは界面活性剤が多く含まれていることから、洗浄後の皮膚のダメージも大きくなってしまうというデメリットがあります。マラセチア皮膚炎はそもそも、皮膚のコンディションがよくない子やアレルギーなどの基礎疾患を持つ子に発症しやすい皮膚病なので、できる限り皮膚への刺激は少なくしてあげるのが理想です。

数年前に国内の獣医皮膚科雑誌において、マラセチア用の配合シャンプーでの洗浄ととクレンジングでの洗浄を比較したデータが発表されました。その結果、シャンプーとクレンジングでは、ほとんど効果に差がありませんでした。この結果は、クレンジングの脱脂作用によりマラセチアのエサとなる皮脂が十分に落とされたためだと考えています。

そこで当院では、クレンジングと皮膚の角質を調整するシャンプーを組み合わせて、できる限り皮膚への刺激が少なくなるようにしています。また、シャンプー後に必ず保湿剤を使用していただいています。人でも洗顔後に何もしなければ、顔はパサパサになってしまいますよね?それと同じでわんちゃんの皮膚も洗浄後にちゃんとしたケアをしなければ、乾燥してしまい洗浄前よりもさらに皮脂の分泌を促す結果になってしまいます。このように作用の違うスキンケア製品を組み合わせることで洗浄後の皮膚はサラサラになり、体の臭いもかなり抑えることができます。

シャンプー以外に積極的に取り入れているのが、外用剤のステロイドです。ステロイドには、皮膚を薄くする作用と皮脂腺からの皮脂の分泌を抑制する効果があります。慢性化したマラセチア皮膚炎では皮膚が分厚くなる「苔癬化」を起こしていますので、そういった症例には、外用のステロイドを併用してあげると劇的に改善することがあります。

こういった取り組みにより、当院ではマラセチア皮膚炎に対して抗真菌薬の内服を用いることはほとんどなくなりました。

マラセチア皮膚炎の症例に使用しているシャンプーや保湿剤です

下にご紹介するトイプードルの子はシャンプーと保湿剤をメインとしたスキンケアを行なった症例です。

マラセチアの増殖を予防する!

シャンプーや内服治療などで一旦マラセチアが減少しマラセチア皮膚炎が治ったあとは、再発しないように対策を取る必要があります。治療の際には週2回実施していたシャンプーを週1回くらいに減らして、皮膚のコンディションを維持していくと良いでしょう。シャンプーだけではフケやべたつき、体の油っぽい臭いが出てきてしまうわんちゃんは、日々のスキンケアとしてローションやムースを使用していただくこともオススメです。

また、マラセチア皮膚炎の原因の項目でもお話したように、なんの原因もなく突然マラセチアが増殖し、皮膚炎を起こすことはあまりありません。ほとんどの場合で、基礎となる原因が存在します。その原因が体質による油症であれば、皮脂のコントロールが必要になりますし、ホルモンバランスの乱れであればお薬を使ってホルモンバランスを整えてあげる必要があります。

 

マラセチア皮膚炎をコントロールするためには適切なシャンプーが必須です。

youtubeでは当院が推奨するシャンプーの方法をご覧いただけます。

 

この動画で紹介しているシャンプーはこちらからどうぞ!

 

シャンプーをするときはドライのためのタオルも大切です!

マイクロファイバーのタオルを使うと吸水力があり、タオルドライ後のドライヤーをかける時間を短縮することができるため、わんちゃんの負担を減らすことができます!

 

まとめ

マラセチア皮膚炎は治療とその後の再発予防が非常に大切な皮膚病です。一度、悪化してしまうと健常な状態まで戻すのには、時間と労力が必要になります。動物病院では、どれくらいの頻度でお薬を使ったりシャンプーをしたら、皮膚のコンディションが維持管理できるのかを考えながら、飼い主様に治療方針をお伝えしています。先生と相談しながら、その子にあった治療方法を見つけてあげてください!

もしワンちゃん、猫ちゃんの皮膚のことで少しでも気になることがございましたら是非一度、お気軽にご相談ください!

 

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これまでブログで紹介した子たちをインスタグラムでも紹介していきます!ぜひご覧ください!

 

 

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